Research Abstract |
1.中国甘粛省皇城遺跡の現地調査を実施し,皇城遺跡南囲郭は想定通り,囲壁一辺の長さなどからモンゴル時代のものであることが判明した.この囲郭が,既存の文献資料などを参考にすると,モンゴル第2代皇帝オゴディの次男コデンに関わることが一層明確となった. 2.モンゴル南部中央付近のオムノゴビ県,オーランシベ遺跡とサイリン・バルガスン遺跡について現地調査を実施した.当地域は年降水量50mm以下の乾燥したゴビ(礫沙漠)である. 前者では,一辺130-140mの方形囲郭(オーランシベ1)と烽火台(オーランシベ砦)が確認され,QuickBird衛星の詳細な判読から,オーランシベ1南に,向きをやや異にした,一辺約220mの方形囲郭(オーランシベ2)が接し,その南側には,南北約800m東西約360-330mの範囲に,疎な草本が示す井桁状土地パターン,オーランシベ2と井桁状土地パターンの東沿いには,幅20-40mで長さが10km以上の,緩やかに蛇行したワジが存在した. オーランシベ1は前漢代の「障」と想定され,現在の環境では厳しいものの,付近ではかつて農耕が実施されていた可能性を強く示唆された.また,オーランシベ1の北東約8km付近には長城址が存在し,GoogleEarthによれば,この長城址は,「障」と推定される方形囲郭を伴いつつ,若干北側に張り出しながら,東西に延びており,漢代のものと推定される. サイリン・バルガスン遺跡は,東西にのびる山地(岩稜)とワジの間,ワジ右岸側に立地する,最外側囲壁の一辺が1kmの,ほぼ四重の囲郭である. 3.キルギス共和国トクマック地区の遺跡の立地条件は,1)大規模な合流扇状地扇端付近,2)崖端上部沿い,3)小規模な扇状地ほかに区分され,当地区で最大のアクベシム遺跡は,洪水に対する安全性,水(地下水)の得やすさなどの面で,最も恵まれていることが判明した.
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Strategy for Future Research Activity |
1.モンゴル国ゴビ地域の遺跡において,モンゴル科学アカデミー考古研究所と共に,衛星考占地理学的調査を継続する. 2.キルギス国トクマック地区において,キルギス歴史文化遺産研究所,東京文化財研究所等と共に,衛星考古地理学的調査を継続する. 3中国新疆ウイグル自治区の遺跡について,中国社会科学院新疆文物考古研究所と共に,衛星考古地理学的調査を実施する.
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