2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23253007
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮 剛 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30361786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 郁夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10448235)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 冥王代 / ジルコン / ラブラドル / ネーン岩体 / 太古代最初期 / 付加体 / 表成岩 / 大陸地殻 |
Research Abstract |
地球上に岩石や地質体が残されていない時代は冥王代と呼ばれ、いまだ地質・生命進化の知識において暗黒の時代とされる。本研究の目的は、冥王代から太古代初期のテクトニクスや表層環境を解読するために、カナダ・ラブラドル地方のネーン岩体で地質調査を行ない、本地域の詳細な岩相地質図と年代地質図を作成する事である。 本年度は、7~8月の約1.5月間、7人で、ラブラドル・サグレック地域のネーン岩体の地質調査を行なった。前年度、私たちは本地域において、予察的な地質調査を行った。本年度は、昨年度の調査に基づき、比較的初生的な地質構造が残されている、Nulliak島、Pangertok Inlet、St. Jones Harbor南部地域の詳しい地質調査と岩石採取をした。また、昨年度の調査において、39.1億年前の岩石を含む露頭を発見した。今年度はその露頭周辺の詳細なスケッチ(1/10スケール)をし、さらに系統的に試料を採取した。全体では、片麻岩、塩基性岩・超塩基性岩、縞状鉄鉱層、炭酸塩岩、チャート、砕屑岩など約1200の岩石試料を採取した。それら、採取した岩石試料の薄片を作成し、岩石記載を行った。また、採取した岩石試料からジルコンを分離し、それらのU-Pb年代を測定した。その結果、本地域において、39.6億年前の年代を持つ花崗岩質片麻岩を発見した。その年代は現存する岩石では世界で2番目に古い年代である。また、表成岩がその花崗岩によって切られていることが地質調査の結果分かった。その結果は、本地域の表成岩が39.6億年前以前に形成された事を示し、現存する最古のものである事を示す。加えて、縞状鉄鉱層や炭酸塩岩の主成分元素、微量成分元素、希土類元素組成を分析し、当時の海洋・熱水組成を定量化する研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、カナダ北東部ラブラドル地方で、7~8月の約1.5月間、7人で地質調査を行なった。この地域は、7~8月でも雪が降り、暴風雪になることもあるが、天候に恵まれ、順調に調査をすることができた。その結果、St Jones Harbor南部において、付加体構造と思われる地質構造を発見することができた。また、採取した岩石のU-Pb年代を測定した結果、39.6億年前の年代を持つものを発見する事ができた。これらの成果は当初の計画以上のものであり、極めて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、本プロジェクトの最終年度にあたる。そこで、これまでの地質調査と年代測定の結果を考慮し、重点的に地質調査を行なう所を選定し、1/5000の詳細な地質図を作成する。特に、今後堆積岩や玄武岩質角閃岩の組成から、冥王代~太古代最初期の表層環境やマントルの温度・組成を解読する研究を進めるために、初生組織を残し、比較的低変成度の地域の堆積岩を連続で、系統的に採取するとともに、その下位に存在する玄武岩質角閃岩を広範囲で採取する。また、鏡下観察の結果、一部のチャート、砕屑性堆積岩には炭質物が残されていることが分かった。その炭質物が生物由来である事を実証するために、それらのチャートの詳しい産状を記載する。
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