2011 Fiscal Year Annual Research Report
南半球における托卵性鳥類と宿主の軍拡競争の新展開:温帯ドグマからの脱却
Project/Area Number |
23255004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
上田 恵介 立教大学, 理学部, 教授 (00213348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 和洋 九州大学, 理学研究科, 助教 (60136421)
西海 功 国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (90290866)
高須 夫悟 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (70263423)
高木 昌興 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70311917)
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Keywords | カッコウ / 托卵 / 共進化 / 宿主 / オセアニア / ニューカレドニア / 生物系統地理学 / 進化生物学 |
Research Abstract |
この研究の目的は,テリカッコウ類と宿主の間で起こっているさらに多様な托卵を巡る進化的な攻防の様相を解明し、托卵行動の進化について新しいモデルを提出することである。 野外調査については、ミドリカッコウ属の1種ヨコジマテリカッコウの生息地である(ニューカレドニアGrand Ferm Park国立公園の野外調査施設を拠点に、昨年度は院生の1人が現地に長期滞在して調査を行った。またほかに1名のPDと2名の院生が2-3週間の短期で調査に加わった。その結果、宿主のニューカレドニアセンニョムシクイの対寄生戦略とヨコジマテリカッコウの托卵戦略について、宿主であるニューカレドニアセンニョムシクイがカッコウ雛の排除を行う事があきらかになった。現地共同研究者との連携も順調に進み、すでに共著論文を何本か執筆中である。 また熱帯域のカッコウの宿主で、ヒナ排除という対托卵戦略が進化して来たかについて、院生の佐藤望が夏期休暇に奈良女子大の高須博士の研究室に滞在し、さらに岩手医科大学の三上修博士の助言を得て、モデルの作成を行った。また2012年2月に立教大学において、科研参加者によるワークショップを開催し、1年の総括を行うと同時に次年度以降の研二究戦略を練った。 これまで積み重ねられてきた関連の研究成果は、2012年8月の国際行動生態学会議(Lund大学,スウェーデン)での発表する予定で、すでに代表者の上田恵介とPDの田中啓太、院生の佐藤望が参加申込を行った。また2012年9月の日本鳥学会大会、日本動物行動学会において口頭発表を行う計画である。 論文の作成は、(1)カッコウの宿主の寄生者のヒナを識別する能力とその認知メカニズムに関する論文、(2)コストの高いヒナ排除がどのように進化してきたのかに関する理論モデルについて、国際誌への投稿をめざしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、院生の1人が現地に長期滞在して調査を行った。またほかに1名のPDと2名の院生が2-3週間の短期で調査に加わった。その結果、初年度において、宿主であるニューカレドニアセンニョムシクイがカッコウ雛の排除を行う事があきらかになった。また現地共同研究者との連携も順調に進み、すでに共著論文を何本か執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は鳥の繁殖期である9-12月に、現地調査を行う。野外調査の経験のあるPD、院生を数名派遣し、また研究代表者も現地に滞在して、より精密で、量的にも解析に十分耐えうるだけのデータとサンプルを収集するよていである。また今年は野外での分光光度計を用いた、カッコウヒナと宿主親の認知能力と色彩適応に関する実験的研究も行う。とくに問題はないが、国立公園内での鳥類の捕獲や、現地の国立公園内での宿舎利用などについてもすでに手配済みで、許可を得ている。研究計画の大きな変更はない。
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