Research Abstract |
1.凸最適化に基づく意思決定方式の提案 2部ランキング問題とは,正または負のラベルが付与されたm個の事例からなる集合が与えられたとき,高いAUC値を持つ実数値関数hを仮説として出力する問題である.ここで,hのAUC値とは,未知の正例x+と負例x-のペアが与えられたとき,h(x+)>h(x-)が成り立つ確率として定義される.この問題は0(m^2)サイズの凸最適化問題として定式化されることが知られているが,mが大きいと効率が悪い.本研究では,2部ランキング問題を0(m)サイズの非凸最適化問題として定式化し,さらにそれを近似する凸最適化問題を繰り返し解くことにより,効率よく局所最適解を求める手法を開発した. 2.離散決定空間におけるオンライン予測 n個の要素の順列(ランキング)を決定空間とするオンライン予測の問題に取り組んだ.この問題は,情報検索を始め,推薦システム,倒産リスク予測など様々な応用を持つ.標準的な予測スキームでは,特徴ベクトル空間の任意の点を,与えられた凸多面体に写像する過程がボトルネックとなっている.本研究では,順列の特徴ベクトルを0(n^2)次元の比較ベクトルで表現した場合と,n次元の置換多面体の端点で表現した場合について,それぞれ効率の良い写像アルゴリズムを構築するとともに,提案予測方式の理論的な精度保証を与えた.また,このアルゴリズムを,n個の要素のうち上位k位までの部分的な順列を予測するアルゴリズムに拡張し,理論的な精度保証を与えた. 3.モンテカルロ木探索 コンピュータ囲碁においては,オンライン予測の手法を用いたゲーム木探索(モンテカルロ木探索)が有効であることが知られているが,理論的な精度保証は弱かった.本研究では,新しいモンテカルロ木探索手法を与えるとともに,その収束回数について,初めて理論的な上界を与えることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凸最適化に基づく様々な解析手法を開発することにより,凸最適化理論に対する理解が深まった.これにより,本研究の目的の一つである凸最適化に基づく競合比解析の研究に対して,より多角的なアプローチが期待できるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
一般的なオンライン意思決定問題に対する,凸最適化手法の適用可能性と限界について,以下の観点から研究を行う.(1)典型的なオンライン問題であるメトリカルタスクシステム問題に対し,凸最適化理論の視点から従来手法の再解釈を行う.(2)離散決定空間に対するオンライン予測アルゴリズムの一般的な設計スキームを確立する.特に,離散最適化の分野で重要な役割を担っている劣モジュラ関数や基多面体との関係を明らかにする.(3)従来のマージン最大化に代わる新たな線形分類器学習方式の定式化を行い,効率のよいオンライン型の学習アルゴリズムを開発する.(4)オンライン意思決定システムの1つとして,ランキング学習を取り入れたコンピュータ将棋の実装を行う.
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