2011 Fiscal Year Annual Research Report
形式言語理論に基づく静的解析法とその安全性検査への応用
Project/Area Number |
23300008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
関 浩之 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (80196948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 瑞史 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (40362024)
楫 勇一 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (70263431)
橋本 健二 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (90548447)
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Keywords | ソフトウェア検証 / 形式言語理論 / モデル検査 |
Research Abstract |
今年度は主に木言語理論を用いた安全性検証法について次の成果を挙げた。データベース内に格納されている機密度の高い情報の漏えいを防止するため、問合せを許可問合せと禁止問合せに分類するというアクセス制御がよく用いられる。しかし、許可問合せの結果を巧みに組合せることで禁止問合せの結果(もしくはその候補)を得られることがある。このような操作を推論攻撃という。データベースtに対する問合せQの結果をQ(t)とかく。Dデータベースt、許可問合せQS、禁止問合せQUが与えられたとき、問合せ結果QS(t)、およびQS, QUのコード、tの従うスキーマを用いても、QU(t)の候補値をk個未満に絞れないとき、tはQS,QUについてk-安全であるという。同様に、候補値を有限個に絞れないとき、tはQS,QUについて∞-安全であるという。データベーススキーマDS, 許可問合せQS, 禁止問合せQUが与えられたとき、DSに従うすべてのインスタンスtに対して、tがQS,QUについてk-安全(もしくは、∞-安全)であるとき、スキーマDSは、QS,QUに対してk-安全(もしくは、∞-安全)であるという。本研究では、XMLデータベースを形式化するため、DSが木オートマトン、QS, QUが決定性線形トップダウン木変換器で与えられると仮定し、スキーマDSのk-安全性は判定不能であること、および、∞-安全性は判定可能であることを示した。 次に、アクセス制御法について以下の成果を挙げた。ロールに基づくアクセス制御(RBAC)では個人とロール間の関係は単一組織内で閉じており多組織間で共有することができない。そこで本研究では、異なる組織のロール間関係だけを定義し、個人がどのロールをもつかを階層的IDベース暗号で認証できる仕組み導入することにより、個人が所属する組織のロールを用いて他組織でアクセス制御を行う機構を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
木言語を用いたセキュリティ検証法に関する研究は予定通りに進展した。また、類似の手法により、XMLデータベースの文書変換に対する情報保存性に関する研究に着手している。文書データベースを長期使用する場合、中途で文書構造を変更したいという要求がしばしば起こる。しかし、不用意な文書構造の変換により、変更前に抽出可能であった情報が変更後は抽出不可能になる場合がある。このような不都合が起こらないとき、文書変換は情報保存性をもつという。与えられたデータベーススキーマDSと文書変換Tに対し、Tが情報保存性をもつかどうかを判定する問題を検討するのがここでの目的である。そのためには、情報保存性を形式的に定義する必要がある。そこで本研究では、DSとTに加え、DSに従うデータベースインスタンスtに対する問合せQが与えられるとし、変換前のインスタンスに対するQの結果と同一の結果を返す変換後インスタンスへの問合せQ’が存在するとき、すなわち、「DSに従う任意のインスタンスtに対し、Q’(T(t))=Q(t)」を満たすQ’ が存在するとき、TはDSのもとでQに対して情報保存性をもつと定義する。DSは推論攻撃の場合と同様に木オートマトンで与えるとし、TとQを現実的に意味のあるいくつかのモデルで形式化し、情報保存性が判定可能かどうかを検討している。情報保存性に関する成果は平成24年度後半より学会等で発表予定であり、また同年度分の科研報告書に記載する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)推論攻撃問題については、問合せのクラスの決定性と線形性は保持しつつ、ボトムアップ型や、先読み付きトップダウン型に変更、拡張したときの判定可能性について考察する。さらに、判定可能である場合の計算量の上界及び下界を解析する。 (2)情報保存性については、文書変換および問合せのクラスの設定について種々のバリエーションを検討する。我々は主にXMLデータベースに興味をもっており、XML文書は木構造で表現されるので、文書変換のクラスとしては木変換器の適切な部分クラスを設定する。問合せのクラスについては結果が再びXML文書となる場合、および、結果が数値等の値または値の集合となる場合の両方を想定し、前者については木変換器、後者については木オートマトンのrun(状態の木頂点への割当て)に基づく問合せモデルを用いる。 (3)セキュリティ安全性やプライバシー保全の量的尺度として、量的情報流、k-匿名性、差分プライバシー等の概念が最近提案されている。これらの概念を扱えるような静的解析の手法も種々提案されているが、主にその定義から、情報理論的もしくは統計的アプローチが主流である。しかし、データを外部に出力もしくは漏洩する実体はプログラムである。そこで今後の研究では、プログラムの振舞いを、上記の概念を組み込んだ形で形式言語理論を用いて適切にモデル化し、より現実的な解析手法を提案することを目指す。
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Research Products
(4 results)