2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23300018
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池永 剛 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90367178)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 動画像符号化 / 信号処理 / 電子デバイス・集積回路 / マルチメディア情報処理 / 情報システム / 国際情報交換 |
Research Abstract |
HEVCの符号化アルゴリズムの低演算量化を目的として、昨年度検討を行った動き予測、適応型補間フィルタ、直交変換・量子化に加えて、今年度は、イントラ符号化アルゴリズムにも焦点を当て低演算量化の検討を行った。イントラ符号化は、HEVCにおいては、予測モードが8方向から33方向に増加しているため演算量の増加が顕著である。今年度は、画像ブロックのテクスチャを解析からイントラ予測モードを選択する方式を提案した。低い計算オーバーヘッドを維持しながら、固定小数点演算に基づくエッジ検出精度を向上させることができる。さらに、そのロバスト性を向上させるため、ヒストグラム計算にカーネル密度推定を導入する手法を提案した。評価の結果、圧縮効率を維持したまま、High efficiencyモードで25.21パーセント、Low complexityモードで37.61パーセント、エンコード処理時間を低減可能な事を確認した。また、イントラ予測モードおよび適応型補間フィルタの低演算量化の新たなアプローチとして、輝度信号と色差信号の相関性を用いた低演算量手法を提案し、イントラ予測モードは30%、適応型フィルタは59%の演算量削減可能な事を確認した。 また、将来のTV会議システム応用などのキーとなるスケーラビィリティ拡張の検討にも着手した。一部の成果は、寄書提案としてまとめ、スケーラブル拡張を検討している国際標準化委員会へ投稿した。 さらに動画像圧縮を含む映像システム実現のコアとなる、画像フィルタ、物体追跡、特徴抽出などの処理にも注力し、種々の低演算量アルゴリズムやハードウェアアーキテクチャを考案し、実時間システムを実現し、成果を発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、次世代の動画像圧縮規格であるHEVCの低演算量化に関する成果(適応型フィルタ、イントラ予測モードなど)に加えて、将来のTV会議応用を睨んだ、スケーラブル拡張やそのトランスコーダの成果などを数多く発信した。さらに将来の映像システム全体を構成する上での差別化のキーとなる超解像画像フィルタ、画像認識処理(動物体追跡、特徴抽出)やアプリケーション技術(ジェスチャーインタフェース)など幅広い成果を発信できた。論文成果は、査読付き学術論文誌4件(掲載決定済み論文3件を含む)、査読付き国際会議10件、査読付き国内会議4件、全国大会・研究会11件となった。これらのうち、中国清華大学との共著論文は、7件となっており、海外連携の成果も生まれている。 また、将来の高臨場画像通信・放送サービス実現に対する取り組みとして、大手電機企業、通信企業、放送企業各社との技術交流を深め、今後の当該分野における技術戦略、応用戦略に関する認識を共有した。さらに、今年度は、この分野を世界的にリードしつつある、中国清華大学や台湾国立交通大学、国立成功大学などを訪問し、国外での技術動向について把握するとともに、中国のHUAWAYや最先端動画像IPを発信し続けている中国ベンチャー企業との技術交流も行い、世界の産業動向に関しても調査を行った。以上の取り組みを通じて、今後進むべき、技術並びに産業の方向性に関して明確化できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
HEVCは最終標準化仕様が固まり、2013年1月に新たな動画像圧縮規格として開示された。今後は、エンコーダの低演算量化やハードウェアシステム実現に向けた取り組みが、世界レベルで活発化すると考えられ、引き続き、現在の検討を進め、世界レベルでの競争力を有する、成果を発信して行く予定である。一方、総務省を中心として、4Kやスーパーハイビジョンといった超高精細な放送サービス等の実現に向けた取り組みが活発化しつつある。現在、将来の産業化まで睨んで、大手電機企業、通信企業、放送企業各社との技術交流を深めて来ているが、さらに具体的な製品化等を睨んだ交流を活発化させる予定である。技術面では、引き続きアルゴリズムの低演算量化およびハードウェアアーキテクチャの検討を進めるが、高精細画像を対象とした場合、現在のLSI技術では、現実的なコストでのエンコーダーシステムの実現は難しい状況である。よって、従来のアプローチだけでなく、超解像技術等の全く新しい概念とリンクさせた取り組みに着手し、大きなブレークスルーが得られる様な模索を行う。 また、映像システム全体を考えた場合、動画像圧縮のみならず、画像フィルタ、画像認識処理(物体追跡、特徴抽出)やアプリケーション技術など幅広い視点で検討する必要があるため、昨年度に引き続き、これらの取り組みも重点化して、検討を進める。これらの課題に関しても、アルゴリズム検討だけでなく、ハードウェアアーキテクチャの検討を行い、実時間デモシステムを実現して、機器展等に積極的に情報発信すると共に企業を通じた産業化に尽力する。
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Research Products
(27 results)