2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模複雑システムとしてのナノ光電子系に学ぶ情報ネットワーク設計制御
Project/Area Number |
23300031
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
成瀬 誠 独立行政法人情報通信研究機構, 光ネットワーク研究所フォトニックネットワークシステム研究室, 主任研究員 (20323529)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 正幸 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80200301)
會田 雅樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60404935)
ペパー フェルディナンド 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究マネージャー (40359097)
和田 尚也 独立行政法人情報通信研究機構, 光ネットワーク研究所フォトニックネットワークシステム研究室, 室長 (20358873)
|
Keywords | ナノ光電子系 / ナノフォトニクス / 情報ネットワーク |
Research Abstract |
本研究では、現実の物理世界において、ナノ領域における光電子系の相互作用に基づいて、高効率かつロバストに動作しているシステム(ナノ光電子系)を情報ネットワークの視点から分析し、そこで明らかになった性質を情報ネットワーク設計制御に展開する。 本研究の初年度である平成23年度は、ナノ光電子系におけるエネルギー消費性能、タイミング依存性、自律動作の分析などの情報システムとしての基本性能の解明を中心に研究を進めた。電子デバイスに対して電力消費効率が1/10000となり得ること、また相互作用ネットワークの存在故に自律性が生じることを確認した。なお、ここで分析したタイミング依存性は2入力1出力のANDゲートへの入力信号の到着タイミングのずれ(スキュー)に対する耐性であり、ネットワーク化された大規模システムの基礎としても最も基本的な内容である。入力信号のパルス幅よりも10倍以上長い時間幅のスキュー耐性を有することや、スキューに対する非対称性が生じることが明らかになった。このような性質は、パルスのタイミング依存性に基づいた可塑性(Spike-timing-dependent plasticity)を用いた信号処理が行われていると言われている脳の性質との類似性を示唆するものでもあり、情報システムとしての有効活用への発展可能性があると思われる。また、自律性については情報ネットワークとの関連性についても考察を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要欄に記載のように順調に成果が出ており、また、学術論文誌や内外の学会における発表も充実して行われていることに基づく。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年度目である平成24年度は、初年度に着手したナノ光電子系におけるエネルギー消費性能や自律動作の観点を機軸に情報システムとしてのナノ光電子系の性質の解明を進捗させる。また、情報ネットワークでは、大量の構成要素の詳細情報を個別に把握することが困難な規模となっており、ネットワークの上位層が下位層の状況を完全に把握することは事実上極めて困難と考えられ、その観点から大規模複雑システムの粗視化技術や自律的な構造形成技術が重要である。一方、ナノ光電子系にはミクロ寸法における詳細な構造情報がマクロスケールの粗な構造情報と調和するなど、階層間の分離構造と相互依存関係が自然に備わっている。これらの知見に基づき、ナノ光電子系の階層構造の分析技術として知られているアンギュラースペクトル理論や湯川ポテンシャルに基づく相互作用理論、さらには光伝搬の一般則の一つであるホイヘンスの原理等を発展させ、情報ネットワーク応用との関係性を捉えたモデル化に発展させる。
|