2012 Fiscal Year Annual Research Report
3次元医療画像に対する時空間的な操作系の確立とがん自動診断への応用
Project/Area Number |
23300035
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
有澤 博 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (10092636)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | PET-CT画像診断 / 医療画像DB / データベース / マルチメディア |
Research Abstract |
本研究の目的は、次の内容である。CT、 PET、 MRI等の医療画像機器が生成する3次元画像による医師の画像診断を支援する操作系を構築する。その際PETとCT等複数種の画像(モダリティ)間で重ね合わせや差分による画像、あるいは造影剤投与時の時間変化(微分)画像などを、医師の直観により自由に組み合わせて演算・合成し、最終的な可視化ができるようにする。さらに申請者グループが開発したがん診断に用いる画像関数(個別臓器の輪郭抽出、陽性判定など)を提供し、経験豊かな読影専門医と協力してがん自動診断の全過程を一連の画像操作として実現させる。さらに診断アルゴリズムを制御構造や中間結果の記憶などを伴って記述できるような言語にまとめ、実際の臨床データ(症例)に基づくさまざまの診断事例をデータベース化する。 この目的に沿って、読影専門医にインタビューし、臓器認識、異常領域(3次元)の候補領域の抽出、陽性(異常=腫瘍)判定というステップを逐次アルゴリズム記述言語MDPLで書き下した。その結果、ほぼ全身からがんを疑う異常領域を抽出でき実症例によってその有効性を検証できた。特に肺とその周辺に於いては好成績を挙げた。 24年度末までに開発された診断アルゴリズムでは肺以外の部位(横隔膜から下)においては肝臓、腎臓以外の臓器の切りだしには成功しておらず、また、腸管についても誤判断が目立った。これらはもともと画像が明瞭でないことや個体による変動が大きいことに起因していることが分かったので、今後はこれを修正する手法を研究する必要がある。その際に基本となる画像オペレータの追加や、他の比較・参照画像(遅延画像など)の導入等も考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PET-CT画像を用いたがん自動診断アルゴリズムに於いて、協力病院から実際の症例をいただいて、①肺と肺周辺、②横隔膜から下の体幹、に分けて自動診断の精度を検証した。 その結果、①に於いては見逃し(False Negative)はなし、過剰指摘(False Positive)率は2倍程度となり、②に於いては見逃しは1/30、過剰指摘(False Positive)率は8倍程度となり特に肺領域周辺に於いては好成績を挙げた。また過剰指摘のほとんどについては理由が判明した(領域取得時の過剰、異常判定閾値の設定が不適切など)。今後特に過剰指摘の減少に注力すれば自動診断が実用域に達すると思われるので、おおむね順調と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
自動診断に於いては診断精度を上げるための基本(領域抽出)オペレータの改良、全体アルゴリズムの改良の両者にわたって改善しなければならい。1年目はオペレータを中心に研究を行った。2年目に於いては異常領域の判定を中心としてアルゴリズムの骨子となる部分の改良に努めた。その結果、FDG(注入薬剤。放射性ブドウ糖)の分布・強度が実態を反映してそのまま画像化され、値となって表れるのではないという事が分かってきた。すなわち容積により濃度がかわる(部分容積効果として知られている)。この変動部分を補正して実態を反映した画像化させることにより、さらに診断精度は向上すると思われる。今後はこの問題に取り組みアルゴリズムを改良・拡張して行きたい。
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