Research Abstract |
ユーザの状況を反映しない情報提示は,思考の分断化によって作業効率を低下させる.そこで本研究課題は,人の知的活動や社会活動を阻害しない情報提示や遠隔からの話しかけの実現に向けて,在室者が行う作業や社会活動の,1)室内の騒擾度(ざわつき)と,2)他者との社会的結合度(コミュニケーション・共同作業)の2要素によるモデル化と,モデルに基づく室内の知的活動状況の自動推定を目指すものである. 初年度である2011年度は,実験環境を構築し,俯瞰映像と音声からなる,連続約5時間の居室状況データ10日分を取得した.さらに,取得したデータに対して,知的活動に伴う部屋の割り込み許容の程度(部屋の割り込み許容度)を,実験室を居室としない評価者5名に主観評価させた. 動画像処理プログラムを作成して動きを検出し,検出された動きを大きさによって3段階に分類し,割り込み許容度との関連を分析した.その結果,これまでの研究で示唆されていた,移動に伴う大きな動きや中程度の動きの総検出数に加えて,動きの検出領域数にも割り込み許容度との正の相関が見られた.一方,在室者の在席作業を反映すると見られる,中程度以上の動きに伴わない小さな動きは,割り込み許容度と負の相関関係を持つことが明らかになった. また,動き検出領域から在室者の位置を近似的に算出することで,在室者間のインタラクション発生を検出し,割り込み許容度との関連を分析したところ,両者の関連性を示唆する傾向が見られたものの,在室者の位置推定精度の問題が明らかになった. さらに,上記と平行して,マイクの指向性と肩波数帯域制限を組み合わせた会話音声の検出を試みつつ,発話潜時,オーバラップ率,発話量といった会話構造関連指標に基づく,会話活性度の推定を試みたところ,会話構造関連指標と会話の活性度の関連性を示唆する結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験系を構築し,計画した連続記録データを取得した.また,騒擾度に関しては,おおむね予想どおりの結果を得た.社会結合度に関しては,分析手法の検討段階であり,傾向は伺われるものの明瞭な傾向を得るに至っていないため,上記の達成度とした.
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