2012 Fiscal Year Annual Research Report
音信号に対する知覚不可能な情報ハイディング技術の研究
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23300070
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
鵜木 祐史 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (00343187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮内 良太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (30455852)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 情報ハイディング / 蝸牛遅延 / 知覚不可能性 / 頑健性 / 秘匿性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,生理的・知覚的な聴覚特性を考慮した位相情報操作により,ディジタル表現された音信号そのものに様々な情報を知覚されないように隠す,マルチメディア情報ハイディングの基盤技術を確立することである. 本研究では,次の5つの課題に取り組む.1.蝸牛遅延に対応する位相の時間変化と検知閾の関係の調査,2.片耳・両耳受聴における蝸牛遅延に対応する位相の時間変化とその知覚の検討,ならびに両耳間での位相変化の同期・非同期と検知閾の関係の調査,3.これらの知覚研究の成果に基づいた情報ハイディングのための群遅延制御法の確立,4.音信号へのディジタル情報の埋め込み・検出に関する総合評価ならびに埋め込み情報量の調査,5.応用展開. 平成24年度は,課題2~5に取り組んだ.まず,2に関しては,片耳・両耳受聴における蝸牛遅延に対応した位相特性の検討ならびに両耳間での位相変化の同期・非同期と検知閾の関係の調査を行った.その結果,左右信号間の蝸牛遅延特性の違いは,原信号がモノラル録音である場合に検知されやすく,ステレオ録音である場合に検知され難いことがわかった.これにより,ステレオ電子音響透かしへの拡張性があることを確認した.今後は両耳間の位相制御に関しては継続的な検討が必要である.次に,3と4に関しては,第2種研究会が企画した「第1回音響電子透かしコンテスト」に参画し,提案法の総合評価を行った.その結果,対象信号が正弦波のような信号(例えば,トライアングル音)に関しては,現行の蝸牛遅延のPSK位相操作法では知覚されるケースがあることがわかった.これに関しては時間とともに連続的な変化を許す位相操作を行う必要があることがわかった.最後に,5に関しては,音声信号の改ざん検出法とAMラジオにおける情報ハイディング法といった新しい応用展開を実現した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付時の計画どおり,課題2~4に絞って取り組んでいたが,順調に研究が進み,一応用例として課題5にも取り組み,成果(論文と特許出願)を出すことができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,これまでの課題1~4を俯瞰的な視点から再検討するとともに,効率的に実装した音信号に対する情報ハイディング法に対して最終的な総合評価(知覚不可能性,秘匿性,悪意のある攻撃等に対する頑健性)を行う.既に実装済みの電子音響透かし法の埋め込み限界を明らかにすることで,ステガノグラフィへの処理拡張を試みる.最後に,5の応用課題に取り組み,音信号への別の音信号の埋め込み可能性について検討し,音声秘匿通信等への応用発展を考える.
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