2012 Fiscal Year Annual Research Report
図的表現系の能力と図的推論の運用に関する総合的研究
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23300101
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
下嶋 篤 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (40303341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 恭弘 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60374097)
杉尾 武志 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (60335205)
竹村 亮 日本大学, 商学部, 助教 (70583665)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 推論・問題解決 / 図的推論 |
Research Abstract |
図的推論は論理学的・計算論的・心理学的アプローチによって研究されることが多いが、従来これらは別々に適用され、その成果が統合されることはほとんどなかった。これに対し本研究課題の目的は、図的推論の容易さと効率性に関わるいくつかの一般的特性に焦点をあて、それを基軸に各アプローチを拡張・統合することによって、人間の思考プロセスにおける図の役割を総合的に理解することである。 この目的に向けて、大きく次の3つの進展があった。(1)下嶋・片桐を中心に、図的表現の一般的特性のうち、前提を図に表現すると同時にその論理的帰結が表示されるという特性と、前提を表示しようとするとそれから論理的に帰結しない情報の表示が強制されるという二つの特性に焦点を当て、そこから予想される認知機能に関する仮説を視線運動の観点から検証した研究をまとめ、平成25年3月に Cognitive Science 誌において出版した。(2)竹村を中心に、、図的表現上のlarge-scale objectsを解釈することが、図の読み取りにおいてどのような計算論的利点をもつかについて基本的なチューリング・モデルに基づいて研究し、その成果を「Diagrams 2012:図的表現の理論と応用に関する国際学会」で発表した。(3)杉尾を中心に、人間が図的表現上のlarge-scale objectsを背景から取り出し、これを読み取り課題に最適に分節化する際の注意メカニズムについて実験心理学的な方法で研究し、上記Diagrams 2012において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記した(1)の進展は、図的推論に関する論理学的・計算論的・心理学的アプローチを統合した研究として方法的な新規性が高い。また、図的推論の効率性に関する一般性の高い仮説を検証できたことで、結果の重要性も高い。さらに、認知科学の分野で国際的な権威があり、サーキュレーションの優れた Cognitive Science 誌に掲載されることによって、学術界に対する貢献も極めて高いと考えられ、当初の研究目的に対する高い達成度を示している。これに加え、研究実績の概要で記した(2)と(3)は、large-scale objects の解釈にかかわる図的推論の別の側面に焦点を当てた点で、本研究課題で構想した方法論の新たな展開をしるすものであり、本研究科大のさらなる進展に寄与している。まだ萌芽的な研究段階でありながら、図的表現の理論と応用の分野でもっとも権威ある国際学会 Diagrams 2012 での発表を認められたことは、これらの研究の水準の高さを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で記した(1)の成果を下敷きに、平成25年度は下嶋を中心に、図的表現の他の論理的性質や、異なる性質間の関係をふくめた総合的な研究を行い、英文の著作として出版する予定である。また、(2)の成果を受けて、平成25年度は竹村を中心に、基本的なチューリングモデルを人間の知覚・認知の現実に近い計算論的モデルに発展させることによって、図的表現の大局的解釈の利点に関するより詳細な理解をめざす。さらに、(3)の成果に基づいて、平成25年度は杉尾を中心に、実験刺激を改良したうえで、脳画像の観点からも、small-scale objectsとlarge-scale objectsの解釈過程を研究し、両者の間でのswitchingに関わるメカニズムや、認知スタイルとの関連も含めて研究する。 これらの研究の成果は、通常の国際学会での発表や、論文誌における出版に加え、平成26年に開催予定の「Diagrams 2014:図的表現の理論と応用に関する国際学会」においてチュートリアルの形で発表し、同年開催予定の「ICCS 2014:国際認知科学会」においてワークショップを開催し、広く認知科学者からのフィードバックを受ける予定である。
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Research Products
(11 results)