2012 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫脳における適応的な行動制御信号の生成メカニズムの解明
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23300113
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細田 耕 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (10252610)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 情報生成 / 実時間適応 / 動機付け / 生体アミン / 神経修飾 / 分子機構 / 昆虫 |
Research Abstract |
多くの動物で普遍的に見られる状況に応じた行動の柔軟性は,個体が感覚器で受容した刺激を脳で処理し,その過程で重要な情報を抽出し,記憶と照合して運動制御信号をリアルタイムで生成することで生み出される.この神経生理機構を明らかにする目的で,昆虫の闘争行動を題材に研究を進めた.闘争行動も動物に普遍的に見られる行動で,攻撃の開始から停止や敗者の逃走行動など,状況に応じた行動の遷移が明確に区別できる.コオロギの闘争行動を題材に,攻撃行動の開始,停止,敗者の逃走にいたる適応的な行動の実時間制御の神経機構を調べる目的で研究を進めた. 闘争行動の発現には,脳内の神経修飾物質である一酸化窒素(NO)や生体アミン類などの働きが重要である.特に,生体アミンのオクトパミンは攻撃行動の開始にかかわる動機付けに深く関与していることが薬理実験や脳内アミン量の計測で明らかになってきた.オクトパミンの働きを詳細に検討するため,遺伝子改変コオロギの作成と脳の生理状態を自由行動個体で調べる方法の確立と改良を行った.これまでに遺伝子改変個体の作成に成功し,目的遺伝子の改変を効率的に行う技術開発を進めている.また,個体行動を任意に操作するために,小型ロボットシステムの改良とビデオトラッキング法の開発を行った. 現在,これらの実験法を組み合わせ,自由行動個体からリアルタイムで生理機能を計測するシステムとして,行動の開始と停止にかかわる脳の働きを調べている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ターゲットとしている神経修飾物質関連遺伝子をおおむね同定し,また遺伝子改変コオロギの作成にも成功した.今後は,目的とする遺伝子についての改変を効率的に行う方法の確立に移る.
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Strategy for Future Research Activity |
構築した自由行動個体の生理計測技術と小型ロボットを使った行動誘導技術を使い,攻撃行動の動機付けから攻撃の開始の時点,また,攻撃の中止から敗者における逃走の開始の際に,脳でどのような神経活動や生理学的な変化が起こるのかを実時間で計測し,適応的な実時間での情報生成の神経生理機構(内部状態の更新機構)の解明を目指す.また,コオロギの攻撃行動には,脳内の一酸化窒素(NO)とオクトパミン(OA)による神経修飾機構が重要な役割を担うので,分子遺伝学の方法で神経修飾機構の機能阻害・機能賦活による攻撃・忌避にかかわる脳領域を調べていく.これまでに,遺伝子改変個体の作成に成功しているので,目的とするNOやOA関連遺伝子の改変個体を作成し,任意の時空間パタンで特定の細胞の活動を操作する技術を確立する.最終的に,実時間で適応的な行動を制御する情報生成のメカニズムの解明を目指す.
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