2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23300114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
能瀬 聡直 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30260037)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経可塑性 / ショウジョウバエ / 運動回路 / 臨界期 / 運動感覚フィードバック / 神経回路 |
Research Abstract |
本研究は、ショウジョウバエ胚・幼虫を用いて中枢パターン生成器(Central Pattern Generator: CPG)によって制御されているぜん動運動の発達過程における感覚受容の役割を調べることを目的とする。胚期のショウジョウバエは、産卵後17時間からぜん動運動が徐々に活発になっていき、産卵後22時間で孵化する。運動初期の段階では、各体節は協調せずに個々の筋肉がランダムに収縮する動きのみが見られるが、孵化直前にはこのような散発的な収縮はほとんど起こらず、隣接した体節が協調的に収縮と弛緩を繰り返す成熟した運動パターンが観察される。つまりショウジョウバエの胚発生後期と孵化後数時間の間に、ぜん動運動のパターン形成及び速さの調整が活発に行われることにより、ぜん動運動に関わるCPGが形成されることが示唆される。そこで、昨年度計画において、この時期に種々の感覚神経細胞を抑制し、CPGの成熟過程に与える感覚入力の影響を調べ、chordotonal neuron (cho)と呼ばれる感覚神経細胞の活動の阻害が、ぜん動運動のパターンに長期的な影響を与えることを見いだした。本年度計画では、さらに時期を絞って阻害実験を行うことにより、臨界期の有無を探った。このため、温度感受性Shibireタンパク質をcho特異的に発現させ、温度上昇を上述の胚発生期において2時間ごとにくぎって適用し、運動回路に与える長期的な効果を調べた。指標としては、運動回路が成熟した3齢幼虫におけるぜん動運動の速さを用いた。その結果、胚発生16~20時間における阻害が運動パターンに影響を与えるのに対し、それ以前および以降の操作では影響がなかった。このことは、感覚神経細胞choによる運動回路発達の制御に臨界期の存在することを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、特定の胚発生時期における感覚神経細胞の活動阻害により、運動回路の発達過程への運動感覚フィードバックの関与を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、choによる運動回路制御に仕組みをより詳しく調べる。このため、カルシウムイメージングによりcho細胞の活動様式を解析する等の研究を進める。当初の計画と大きな変更はない。
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