2012 Fiscal Year Annual Research Report
超高速2光子励起顕微鏡による革新的神経細胞観察法の実践
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23300121
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井上 貴文 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10262081)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経細胞 / 樹状突起 / スパイン / 2光子励起顕微鏡 / 蛍光相関分光法 / タンパク質 / 拡散 |
Research Abstract |
本研究は申請者の開発したランダムアクセス型2光子励起顕微鏡システムを用いて、これまで困難だった遊離タンパク質の動態を直接計測することを目指す。多点で同時に蛍光相関分光法(FCS)を適用することにより樹状突起の細胞質中を高速に移動するタンパク質分子の動態を捉え、シナプスと核を連絡するシグナル系の実態を明らかにすることを目的とする。これまで細胞質内を拡散する遊離型タンパク質は拡散速度の桁違いの大きさのため直接的な動態の計測は困難だった。蛍光相関分光法(FCS)は溶液中での一分子の振る舞いを計測する手法で、これを細胞内に適応することにより細胞質内の遊離タンパク質の挙動を追跡できる。しかし従来のFCS装置は細胞内の一点からしか記録できず、細胞内の様々な部位における機能タンパク質の動態解析を行うには制約があった。特に神経細胞は細胞内の機能局在性が高く、同時多点からのFCS解析は非常に多くの情報をもたらすことが期待される。本研究では新規に開発した2光子励起顕微鏡システムを用いカルモジュリン、CamKII、Ca結合タンパク質(calbindin等)などシナプス機能に重大な機能分子のスパイン内外での動態を検出することを試みた。本年度は初代培養神経細胞を用いて樹状突起およびスパイン内のタンパク質のFCS計測を試みた。GFP発現プラスミドあるいはGFP融合CamKIIタンパク質発現プラスミドをマウス由来初代培養神経細胞に発現させ細胞質の複数点から蛍光強度変化を10kHz以上の時解像度で取得することに成功した。自己相関関数よりタンパク質の細胞局所での拡散係数が異なることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計測機械のセットアップ、ソフトウェアの構築、株細胞を用いてのシステムの調整を終わり、今年度は実際に初代培養神経細胞への蛍光タンパク質融合タンパク質を発現させ実際に神経細胞局所におけるシナプスタンパク質の動態の観察に成功した。また、遺伝子発現ベクターの検討もすすめ、FCS計測にあった低発現ベクターの構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は神経細胞内で蛍光タンパク質融合機能タンパク質を低濃度発現させる系を用い、神経細胞の活動依存的にCamKIIタンパク分子の動態がどのように制御されるかを詳細に検討する。CamKIIαとCamKIIβそれぞれを発現させ、両者の神経細胞活動時のダイナミクスの違いを検討する。また、スパイン内あるいは樹状突起内と細胞体において動態に違いがみられるかを検討する。
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Research Products
(1 results)