2011 Fiscal Year Annual Research Report
先天的と後天的な恐怖反応を特異的に制御する神経回路の解明
Project/Area Number |
23300122
|
Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
小早川 令子 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 神経機能学部門, 室長 (40372411)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩井 剛 独立行政法人理化学研究所, 変異マウス開発ユニット, 研究員 (60391968)
|
Keywords | 神経科学 |
Research Abstract |
様々な恐怖反応はいずれの感覚入力によって誘発されたかや、先天的か後天的なのかは区別されずに一概に「恐怖」と呼ばれている。嗅覚入力によって先天的と後天的に誘発された恐怖応答を制御する神経メカニズムの特異性は解明されていない。私たちは、これまでに報告されていたキツネの分泌物由来の匂い分子に比較して遙かに高い恐怖応答の誘発活性を持つ、一連の匂い分子である「恐怖臭」を人工物ライブラリーから初めて発見した。恐怖臭を用いることで、電気ショックによって後天的に学習させた条件と同等のレベルでFreezing行動を誘発することが可能になった。 恐怖臭と嗅覚受容体との結合特異性を解明するために、嗅覚受容体の発現スクリーニング系の構築を進めた。マウスの全嗅覚受容体の発現ライブラリー系へのクローニングを行った。嗅覚神経回路による先天的と後天的な恐怖反応の制御メカニズムを解明するために、一部の嗅覚神経回路でのみ匂い情報の伝達に必須のCNGA2チャネルをコンディショナルノックアウトするマウスを作成した。 恐怖臭による先天的な恐怖応答と電気ショックによって誘発した後天的な恐怖応答とを比較解析した。恐怖臭による先天的な恐怖応答は、これまでに知られていた後天的な恐怖応答と異なり、体表面温度と体深部温度が同時に3℃以上低下し、心拍数が速やかに半減するというこれまでに知られていない特異的に生理応答を伴うことが明らかになった。先天的と後天的に恐怖反応を制御する神経回路を、神経活動マーカーの一種であるArc遺伝子の発現を指標に解析し、先天的と後天的な恐怖反応は異なる神経回路によって制御されることを解明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに、遺伝子改変マウスの作成、嗅覚受容体遺伝子の発現スクリーニング系の構築、全脳マッピング法による先天的と後天的に恐怖反応を処理する神経回路の解析を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
嗅覚神経回路を部分的に不活性化したマウスを作成できたので、このマウスの機能解析を実施する。
|
Research Products
(5 results)