2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経系構築における細胞骨格系制御因子APC2の機能解明
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23300126
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
新谷 隆史 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 准教授 (10312208)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経組織 / 細胞移動 / 細胞骨格 / 神経回路 / 情報伝達 |
Research Abstract |
APC2遺伝子欠損マウスにおける脳神経系の異常の有無について解析を行っている。前年度に、大脳皮質、海馬、小脳、嗅球などの様々な脳の領域で、層構造が正常に形成されていないことを見出している。また、各種の層特異的な分子に対する抗体染色や、ブロモデオキシウリジンを用いたbirth date解析から、これらの層構造の異常は、誕生した神経細胞が秩序だった細胞移動を行わずに、ランダムに移動することによって生じることを明らかにしている。細胞生物学的並びに生化学的解析により、APC2は微小管やアクチン骨格に結合し、それらを制御することを通して細胞外の情報を細胞骨格に正確に伝えるという、重要な役割を果たしていると考えられる。今年度は、APC2遺伝子欠損マウスにおける神経回路の異常の有無について解析を進めた。その結果、APC2遺伝子欠損マウスにおいては神経細胞の移動に異常があるものの、それぞれの神経細胞は軸索や樹状突起を伸長させること自体は正常であることが明らかになった。しかしながら、APC2遺伝子欠損マウスのいくつかの神経投射において、神経軸索の適切な進路選択や神経結合形成に異常があることを見出した。これらの結果から、APC2は神経細胞の移動のみでなく、神経投射の形成においても重要な役割を果たしていることが推測された。さらに解析を進めることで、APC2の神経系構築において果たす役割の全体像が明らかになると期待される。本研究は、ヒトにおいて神経細胞の細胞骨格系の異常によって生じる疾患が発症する仕組みや、それらの治療法の開発につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
解析を行ったAPC2欠損マウスについては十分に満足が行く結果が得られたが、年度途中に動物飼育施設の汚染事故が起こり、解析が停滞したため。
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Strategy for Future Research Activity |
APC2遺伝子欠損マウスについて神経投射の解析を進めることにより、神経回路形成におけるAPC2の役割を明らかにする。APC2遺伝子欠損マウスにおける神経系の異常が、どのような行動異常に結びつくかについて、行動学的解析を行うことにより明らかにする。さらに、APC2と相互作用が推定される分子について、生化学的な解析を進めることにより、APC2の機能発現の分子機構を明らかにする。
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Research Products
(3 results)