2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23300129
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
秦野 伸二 東海大学, 医学部, 教授 (60281375)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 脳・神経 / 遺伝子 / 蛋白質 / 動物 |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位及び下位運動ニューロンの選択的変性を特徴とする進行性運動ニューロン疾患である。ALSは、多数の機能的異常が複雑に絡み合って発症するものと想像されている。本研究は、重要な発症要因の中から、酸化ストレス、タンパク質分解異常、及び細胞内物質移送異常に焦点を絞り、遺伝子改変マウスを駆使することにより、生体レベルでの複数の疾患発症要因の相互連関を明らかにし、最終的にALS発症の包括的分子機構の解明を目指すものである。平成24年度は以下の様な成果が得られた。 1.オートファジー・リソソーム分解系と運動ニューロン疾患発症の関連について 本研究項目では、生体におけるオートファジー・リソソーム系と運動ニューロン疾患発症との関連を明らかにするため、SOD1H46R-TGマウスとp62/SQSTM1-KOマウスを交配させることによりp62/SQSTM1欠損型ALSマウスモデルを作出した。その結果、p62/SQSTM1の欠損は変異型SOD1 H46R発現マウスにおける疾患発症を約4週間早めるとともに、それに平行して生存期間も著しく短縮されることが判明した。現在、生化学的ならびに組織学的解析法による発症過程におけるオートファジー関連遺伝子の発現及びタンパク質産物の解析行っている。 2.酸化ストレス系と運動ニューロン疾患発症の関連について 上記1)と同様な手法により、SOD1H46R-TGマウスとNrf2-KOマウスを交配させることにより、Nrf2欠損型ALSマウスモデルを作出し、その分子病態解析により、生体における酸化ストレス系と運動ニューロン疾患発症との関連を明らかにする。現在、Nrf2-KOマウスとSOD1H46R-TGマウスとの交配を進め、Nrf2遺伝子欠損が変異型SOD1 H46R発現マウスにおける疾患発症に及ぼす個体レレベルでの解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、多種類の遺伝子改変マウスを使用した動物実験であり、研究初年度に全ての系統の清浄化が完了し、順調に繁殖を行うことができた。本研究では、さらに各々の遺伝子改変マウス間での交配が必須であるが、昨年度(平成23年度)に多重遺伝子改変マウスの作出効率が予想より著しく低い(繁殖効率が単一遺伝子改変マウスより低い)ことが判明した。そのため、本年度は繁殖コロニーサイズを増やし、現在繁殖による多重遺伝子改変マウスの作出が軌道に乗っている。従って、本年度は初年度での問題点は解決されたが、その際の研究の遅れに関しては、マウス生育のスピードを加速させることはできないため、結果として研究の進捗状況としては、当初の実験計画より遅れている。しかし、本年度までに、当初予定していた研究初年度における計画実験を順調に遂行することができた。従って、今後の研究(各種解析)を加速させることにより、最終年度である平成25年度中には計画するほぼ全ての実験を完結することは可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、計画より若干遅れているが、おおむね順調に進んでおり、研究計画の修正及び変更の必要はない。従って、次年度以降も当初の研究計画に従って研究を遂行する計画である。 1.オートファジー・リソソーム系及び酸化ストレス系解析:本研究項目では、p62/SQSTM1欠損型ALSマウスモデルの脊髄を中心とした中枢神経系の生化学的・免疫組織学的手法による解析を行い、神経細胞体、軸索変性の経時的変化、オートファゴソーム、ミトコンドリア等の細胞内小器官の超微形態学的観察も併せて行う。 2.マウスモデルの分子病態解析:Als2-KOマウス、p62/SQSTM1-KOマウス、Nrf2-KOマウスをそれぞれ交配し、ダブル及びトリプルKOマウスを作出し、それらのマウスとSOD1H46R-TGマウスALSモデルを交配することにより、運動ニューロン疾患発症前、発症初期、さらには疾患後期の各段階における生体内でのシグナルネットワークの変動を明らかにする。 3.新規疾患発症調節因子の同定とその機能解析:既知シグナルネットワーク調節因子に結合するタンパク質群を脊髄から生化学的手法により分離し、LC-MS/MS法によりそのアミノ酸配列を決定し、新規調節候補タンパク質の同定を試みる。特定の因子が同定された場合には、その発現、局在、細胞内機能を解析することにより、当該因子と神経細胞内における酸化ストレス系、タンパク質分解系、物質移送系の分子シグナルネットワークとの関連を明らかにし、その変調と運動ニューロン疾患発症との関連の解明を目指す。
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Research Products
(13 results)