2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患におけるDockファミリーの機能解析と治療研究への応用
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23300138
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
行方 和彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主席研究員 (70392355)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Dockファミリー / 神経変性疾患 / 細胞死 / アクチン / 微小管 / 緑内障 / アルツハイマー病 / 多発性硬化症 |
Research Abstract |
Dock3はRac1を活性化するグアニンヌクレオチドであり、アクチン骨格の重合を制御して軸索伸長に影響を与えている。軸索の伸長に深く関わる細胞骨格として、アクチン骨格の他にチューブリン分子によって構成される微小管が知られている。アクチン骨格は成長円錐の細胞膜近傍で機能するが、微小管は神経軸索内部で束化した状態で存在しており、その重合状態が軸索の伸長に影響を与える。微小管の重合・脱重合のバランスはチューブリンに結合するタンパク質(タウタンパクやCollapsin Response Mediator Protein-2(CRMP-2)など)によって調節されている。一方セリン/スレオニンキナーゼであるグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β(glycogen synthase kinase-3β)はCRMP-2のリン酸化を介して神経極性を制御することから、軸索伸長メカニズムへの関与が推定された。本研究の結果からGSK-3βはDock3と細胞膜上で複合体を形成し、同じセリン/スレオニンキナーゼであるAktによって不活化されることが新たに明らかとなった (Genes to Cells, 2012)。以上からDock3はGEF活性依存的および非依存的な複数の経路を介して、アクチンと微小管それぞれの細胞骨格を制御するとともに、神経軸索の伸長に関与することが示された(Journal of Neuroscience, 2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究に関する成果から申請者を筆頭著者として2報の論文および共著論文として3報の論文が国際雑誌に掲載されたことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。また、5つの国内外の学会発表行ったが、そのうち1つには招待講演も含まれており、研究成果を広く公開することに精力的に努めていると考えられる。 また、本研究では遺伝子治療を視野に入れていることから、Dock3のウィルスベクターの作製に着手してきた。Dockファミリー分子はその分子量が非常に大きいことから、これまではウィルスベクターの作製は困難であると考えられていた。しかし申請者は、世界初のDockファミリー(Dock3)のアデノウィルスベクターの作製することに最近成功した。すでにに培養細胞に対する評価を終了しており、今後はマウスを用いた緑内障治療研究や視神経再生治療研究のためにin vivoへの投与を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
Dock3には複数のリン酸化部位が存在し、Dock3とWAVEおよび他のGEFとのheterodimer形成や複数のsmall G蛋白の活性に影響を与えることが明らかとなってきたことから、本年度はすでに作製済みの複数の新規抗体を用いて活性制御機構の解明を進める。またDock3による視神経再生効果を検討するために、ウイルスベクターを利用した緑内障モデル動物に対する遺伝子治療研究を開始する。同様に挫滅手術を利用した視神経再生治療研究も開始する。 一方、Dock3がオリゴデンドロサイトにも発現することを新たに見いだしていることから、脱髄疾患の治療研究についても行う。脱髄を誘発するモデルマウスにおいて、Dock3による神経保護作用の有無について分子レベル(シグナル伝達経路の解明等)、個体レベル(病理解析等)の両面から解析を行う。 これまでの解析にはDock3を過剰発現するマウスを主に利用してきたが、今後は新たにDock3欠損マウスに加え、GFP-Dock3のノックインマウスおよびDock3のホモローグであるDock4欠損マウスを作製することにより、個体におけるDock3の機能解明および治療への応用についてより詳細な解析を可能とする。 これらの成果について、さらにin vitroとin vivoの両面から解析を進めることにより神経変性疾患に対する再生治療の応用に繋げたい。
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Research Products
(14 results)