2011 Fiscal Year Annual Research Report
皮質脊髄路シナプスの形成・可塑性・臨界期とそのメカニズム
Project/Area Number |
23300141
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
桜井 正樹 帝京大学, 医学部, 教授 (30162340)
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Keywords | 皮質脊髄路 / NMDA受容体 / シナプス除去 / GluN2B / ChR2 |
Research Abstract |
1)皮質脊髄(coricospinal:CS)シナプスの腹側からの除去の臨界期終了はGluN2B→2Aのシフトで説明できるか?臨界期にNMDA阻害剤のAPVを適用しておき、臨界期終了後にこれを除去して、臨界期後もシナプス除去(可塑性)が出現するかどうかをみた。2Aの発現がない2AKOマウスではシフトが起こりえないため、2Bが野生型(WT)でめ臨界期終了後も高いレベルで発現している。この2AKOでは臨界期後もシナプス除去がみられることがわかった。更にWTにおいて2Bの発現をupregulateするmGluR5阻害剤のMTEPまたはproBDNFを適用することにより臨界期終了後でもシナプス除去がおこる、即ち、臨界期の再開窓を起こしうる。 2)CS細胞の皮質内分布:第7頸髄に投射するCS細胞を逆行性標識するとこれまで考えられていた体部位局在からは予想できないほどの広い領域が標識され、しかもこれが発達により範囲は概ね不変であるが、密度が低下することが分かった。一方第4腰髄では、このような広範な分布、発達による変化は見られず、前肢、後肢の運動を制御する系が構成、その形成において本質的に異なっていることが示唆された。 3)脊髄内終末の順行性標識:第7頸髄に投射するCS細胞を包括的に標識し、その終末の発達をexo utero electroporationでEYFP遺伝子を導入して観察する予定であったが、上述のように範囲が広すぎてこれは断念せざるを得なかった。代わりに前脳神経細胞にEYFPが発現している遺伝子改変マウスを用いて解析をすることにした(後述参照)。 4)CS線維と運動ニューロンの直接接続;急性の脊髄スライスを用いてCS路(後索腹側端)を電気刺激して筋肉から逆行性標識した運動ニューロンからホールセル記録を行い単シナプス性EPSCが記録できた。更にChR2遺伝子をAAVをベクターとしCS細胞に導入し、光刺激により選択的にCS線維を刺激することを可能にし、この方法を用いて単シナプス接続の存在証明を更に確実なものにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように計画はほぼ順調に達成できている。ただし、皮質脊髄軸索の順行性標識では苫戦し、方法を変えざるを得ず、方法変吏後も脊髄内終末の定量化で苦労しているが、その理由の一つである日齢による蛍光蛋白の発現量の差は皮質での蛍光で正規化することにより回避できそうである。一方、ChR2を用いたoptogeneticな手法は、対象が幼若動物のため十分な蛋白発現がえられるか、ウィルス(AAV)がうまく感染してくれるか不安であったが、どちらも適切に条件検討をすると、予想以上に良好な結果が得られ、光による皮質脊髄路選択的刺激という電気生理ばかりでなく形態学にも使用できるほどであった。両者をあわせて自己評価(2)としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ研究計画書通りに進められると思われる。順行性標識によるCS終末分布の発達変化が大きな課題である。また之までシナプス前部であるCS軸索を中心にみてきたが、シナプス後部の細胞レベルでの観察が今後の大きな課題である。運動ニューロンは同定が容易なので、運動ニューロンからの記録をより日齢の高い動物でのホールセル記録ができるよう努力する。また、介在細胞やシナプス後部を標識すべく、脊髄細胞に感染しやすいAAVを入手し、これにPSD-95,Homer,SAP102などのシナプス後部蛋白を組み込んでその動態をCS線維とともに観察できるよう準備をすすめたい。
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