2012 Fiscal Year Annual Research Report
皮質脊髄路シナプスの形成・可塑性・臨界期とそのメカニズム
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23300141
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
桜井 正樹 帝京大学, 医学部, 教授 (30162340)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 皮質脊髄シナプス / シナプス除去 / 可塑性 / NMDA受容体 / GluiN2B / 臨界期 / ChR2 |
Research Abstract |
1) 前年度、スライス培養(in vitro)における皮質脊髄(CS)シナプス除去の臨界期がGluN2B依存性で、これをもとに臨界期が操作可能であることを示したが、現在、視覚皮質などにおいて発達期可塑性の臨界期を決定する要因として興奮/抑制バランスが重要な役割を果たしているとの説が有力である。我々の系でも抑制をstrychnine等で抑えて2Bを介するCa流入量を増大させると臨界期が延長させうることがわかり、抑制の発達が臨界期終了の修飾因子となっている可能性が示唆された。前年度in vivoや急性スライスで導入したChR2をin vitro実験においても導入し、CS軸索のoptogeneticな選択的刺激が可能となり、また軸索終末の分布の評価にも使えるため方法的に大きな前進となった。 2) In vivoにおいては、皮質脊髄路軸索と運動ニューロン(MN)を前者はChR2-YFP, 後者はTMNで標識して電顕で追跡する技術を開発し、両者間の関係やシナプス構造とその発達を追跡する基礎を固めた。 3)前年度、幼若期における皮質脊髄単シナプス結合を電気生理学的に証明したが、MNからのホールセル記録時にNeurobiotinを注入しておいたMNの形態を詳細に観察解析した。MNは従来より星状細胞の代表格で、その異質性には注目されていなかったが、皮質脊髄シナプスを受けるMNは樹上突起の配向に特徴があること、MNプール毎に形態的特徴があることが示唆された。現在それらの定量的評価法を開発しつつある。 4) 皮質脊髄線維の脊髄内終末の発達変化を頸膨大(C7)、特にシナプス除去が起こることが予測される腹外側部において研究するため、P7から成体に至るまで終末を網羅的かつ定量的に、画像処理ソフトにより自動解析する方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) in vitro実験は担当者の個人的事情などにより進捗が必ずしも十分ではなかったが、現在、興奮/抑制のバランスで説明できるとされている臨界期の決定機構において、少なくとも我々の系においては、2Bから2Aへのシフトが主軸であり、抑制の発達がその修飾因子であることを示し得たことは上述のChR2の導入とともに大きな成果であった。そのため、当初の研究計画ではGluN2B下流のシグナルとしてのCaMKIIの関与を示すことが主要課題の一つであったが、こちらが進行していない。しかしこの実験自体はノックイン(KI)、ノックアウト(KO)動物が入手、利用できれば、現在の技術の延長上で比較的容易に遂行可能である。 2) 実績概要にも述べたように、in vivo系においては、25年度以降の発展の基礎となる実験法、解析法の開発に成功し、目標達成に具体的な展望が開けている。ただし、成体脊髄の急性スライスにおいてMNからホールセル記録をとることはラットばかりでなく、よりMNが小型のマウスにおいてもかなり困難である。 以上より当初の計画外の成果も得られているが、そのためもあって若干遅れた部分もあり、自己評価は(2)とさせて頂くことにする。
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Strategy for Future Research Activity |
1) in vitro系では実験手法的には確立しているので、KI, KOマウスを使用して実験を進める。来年度以降を考え、単一CS軸索とそのシナプスのライブイメージングを試みる。 2) in vivoでは昨年度開発した解析法を用い、CS神経終末の脊髄内(特に腹外側部)分布の生後発達を網羅的に追跡する。一方、運動関連皮質、特に軸索シナプス除去率が高い領野からの局所的順行性標識によりその生後発達を観察する。 3) 急性スライスでMNからの細胞内記録、ホールセル記録をP30くらいまで可能にする。どうしても困難な場合は個体を使って運動ニューロンからの細胞内記録またはin vivo patch記録を行う方向へシフトする。 4) MNに直接接続するニューロンとその発達による変化を系統的に調べるため、単シナプス性にのみ逆行性輸送される変異狂犬病ウィルスを筋注して使用することを念頭におき、これら変異ウィルスの開発者達との共同研究を検討中である。
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