2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23300143
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
関 和彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所モデル動物開発研究部, 部長 (00226630)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 霊長類 / 無麻酔 / 手首運動 / 脊髄 / 抑制性ニューロン / 介在ニューロン / シナプス前抑制 |
Research Abstract |
これまで申請者らが行なってきた覚醒サル頸髄部からの神経細胞活動記録においては、運動ニューロンプールに興奮性の出力をもつニューロン(興奮性介在ニューロン)が多く記録されたが、抑制性介在ニューロンと推定されるニューロンの記録例は少なかった。その理由として抑制性介在ニューロンは細胞体のサイズが小さい事が知られており、記録方法の改良が必要となった。そこで本研究では、覚醒サルにおける抑制性介在ニューロンの同定法を確立する事を目的としていた。そのため、本年度はまずシナプス前抑制を司るGABA作動性介在ニューロンの活動を間接的に推定する方法を検討した。サルが手首の屈曲伸展運動している最中に、橈骨神経深枝(DR)から短潜時入力を受ける脊髄ニューロンを検索し、その近傍で脊髄内微小電流刺激を行い(10Hz, 1-20μA)、DRにおいて誘発される逆行性電位を記録した。その逆行性電位のサイズを測定し、PADを伴うシナプス前抑制の大きさを評価した(興奮性テスト)。逆行性電位のサイズは、手首伸展トルクを一定に維持する運動局面において有意に減少する事がわかった(p<0.05)。この結果は、関節トルクを一定に維持する事が求められる運動時には、一次求心神経へのシナプス前抑制が減衰し、主働筋からの求心性情報が積極的に中枢神経系に取り込まれていることを示唆した。次に、精密把握運動時のサルを対象に、抑制性脊髄介在ニューロンの活動記録を行った。この際、抑制性ニューロンの同定には昨年度開発した方法を用いた。その結果、抑制性介在ニューロンは興奮性介在ニューロンに比べてより広範囲の筋への投射パターンを持つ事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究によって、覚醒行動下のサルにおける抑制性介在ニューロン活動の評価方法がいくつか確立した。特に本年度は、必ずしも当該ニューロンから細胞活動記録を行わなくてもそれらの活動を推定できる方法を明らかにできた事、特に運動制御にとって重要な筋感覚入力へ直接投射する抑制性介在ニューロン活動の推定ができたのは大きな成果である。また、把握運動研究の結果にみられるように、開発された技術を用いた新たな知見ももたらされている。
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Strategy for Future Research Activity |
介在ニューロンの同定法や記録法の確立は簡単でなく、今後も継続して行う必要がある。一方、開発された方法論を用いて、行動制御におけるそれらニューロンの機能を明らかにする研究を推進する事も大切である。今後1年間も両者を並行して行うが、徐々に後者の比重を多くして進めてゆく予定である。具体的には、本年度行ったシナプス前抑制に関する研究を2頭目のサルを対象に行うと同時に、それぞれの抑制性介在ニューロンの活動パターンとそれらへの求心神経入力パターンの相関関係を詳細に検討する。
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Research Products
(9 results)