2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳内セロトニン低下を伴う拡張型心筋症モデルマウスの心不全発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
23300145
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森本 幸生 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (50202362)
|
Keywords | 心不全 / 拡張型心筋症 / セロトニン / うつ病 / 迷走神経 / ノックインマウス / 抗うつ薬 / 抗不安薬 |
Research Abstract |
心不全発症に圧受容器反射の脳内セロトニンによる調節メカニズムの破綻が関与しているという仮説を検証することを最終目的に、トリプトファン水酸化酵素2の遺伝子変異により脳内セロトニンレベルが低下しているBALB/c系統マウスに拡張型心筋症(DCM)を引き起こす心筋トロポニンT遺伝子の突然変異ΔK210を導入して作製した心不全発症ノックインマウスの病態の詳細なキャラクタリゼーションを行った。覚醒下におけるMモード心エコー測定および血圧測定により、BALB/c遺伝的背景のDCMノックインマウスの心臓収縮機能は、明らかな心不全症状を示さない代償性心不全モデルであるC57BL/6遺伝的背景のDCMマウスに比べて有意に低下していることが明らかになった。また、BALB/c遺伝的背景DCMマウスでは、C57BL/6遺伝的背景DCMマウス比べてより高度な心筋線維化がみられるとともに、心不全バイオマーカーであるBNP発現レベルの顕著な増加がみられた。さらに、BALB/c遺伝的背景DCMマウスでは肺重量の顕著な増加とともに、ヒト末期重症心不全患者の心臓において発現レベルが低下していることが知られているSERCA2aの発現レベルの劇的な低下が確認された。以上の結果は、BALB/c遺伝的背景DCMノックインマウスが、重篤な心不全を発症する同遺伝子変異によるヒトDCMに対する疾患モデルマウスとして有用であることを示すとともに、心不全発症と脳セロトニン機能との関係を解明する上で非常に有用なモデルマウスであることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は追加採択であったこともあり、心室内圧や薬物投与による治療効果に関する十分なデータは得られなかった。しかし、本研究で使用するBALB/c遺伝的背景DCMマウスが「心不全発症に対する圧受容器反射の脳内セロトニンによる調節メカニズムの破綻の関与」を解明するために非常に重要な心不全モデルマウスであることが確認されたことから、本年度における研究目的の達成度としては概ね順調であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って、BALB/c遺伝的背景DCMマウスの心内圧-容積カーブ測定と心電図測定等によってさらに詳細な心不全病態のキャラクタリゼーションを行うとともに、パロキセチン、バスピロン等の薬物投与とその効果の評価を行い、心不全発症における脳セロトニン機能障害の役割を明らかにしていく。
|
Research Products
(4 results)