2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳内セロトニン低下を伴う拡張型心筋症モデルマウスの心不全発症メカニズムの解明
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23300145
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森本 幸生 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50202362)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 心不全 / 拡張型心筋症 / セロトニン / うつ病 / 抗うつ薬 / 抗不安薬 / ノックインマウス / 迷走神経 |
Research Abstract |
昨年度の研究から、トリプトファン水酸化酵素2(Tph2)の遺伝子変異により脳内セロトニンレベルが低下しているBALB/c系統マウスに拡張型心筋症(DCM)を引き起こす心筋トロポニンT遺伝子の突然変異ΔK210を導入して作製した心不全発症ノックインマウスが、重篤な心不全を発症する同遺伝子変異によるヒトDCMに対する疾患モデルマウスとして有用であるとともに、心不全発症と脳セロトニン機能との関係を解明する上で非常に有用なモデルマウスであることが示された。本年度は、このモデルマウスに対して脳セロトニン機能を改善することが明らかにされている抗うつ薬パロキセチンと抗うつ薬バスピロンの効果を検討した。両薬とも、1ヶ月間の腹腔内投与によって用量依存的に心拡大、心機能低下、心筋線維化を有意に抑制し、それぞれ心筋細胞の生理的肥大と病的肥大に関係するAktとp38MAPKシグナリング活性化レベルの低下をもたらした。さらに、両薬投与により心不全の指標であるSERCA2aとBNP発現レベルが正常化し、呼吸困難、自発運動低下、毛並みの悪化、肺うっ血といった心不全症状が改善することが証明された。また、心電図RR間隔の呼吸性変動の解析から、このモデルマウスで低下している脳から心臓への副交感神経アウトフローの低下が両薬によって改善されることが証明された。以上の結果から、圧受容器反射の脳内セロトニンによる調節メカニズムの破綻が心不全の発症に関与していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
技術的な理由で計画していた心室内圧に関する十分なデータは得られなかった。しかし、その他のデータでは心不全発症に関わる脳セロトニン機能の関与を強く示唆する結果が得られたことから、本年度における研究目的の達成度としては概ね順調であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
技術的困難を克服し心室内圧に関する十分なデータを得る。また、心不全発症における脳セロトニン機能障害の関与を証明するためには、スピードコンジェニック法によりBALB/cとC57Bl/6間でTph2遺伝子のみを入れ替えたDCMノックインマウスを作製し解析することによってさらに決定的な証拠を得る必要があることが明らかになった。今後その作製を進めるとともに、その過程でTph2遺伝子以外に心不全に関わる遺伝子の存在が疑われる場合には、BALB/cとC57Bl/6の遺伝子をさまざまな割合で持つマウスのマイクロサテライト解析を行いその遺伝子を明らかにする。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Role of brain serotonin dysfunction in the pathophysiology of congestive heart failure2012
Author(s)
Li L, Morimoto S, Take S, Zhan D.-Y, Du C.-K, Wang Y.-Y, Fan X.-L, Yoshihara T, Takahashi-Yanaga F, Katafuchi T, Sasaguri T
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Journal Title
J Mol Cell Cardiol
Volume: 53
Pages: 760-767
DOI
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