2012 Fiscal Year Annual Research Report
HIV-1感染症の病態形成におけるマクロファージの意義の解明
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23300156
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
五十嵐 樹彦 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (90467431)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エイズ / 疾患モデル / マクロファージ / リンパ球 / 抗ウイルス剤 / ウイルス / RNA |
Research Abstract |
24年度に計画したSIV/アカゲザル感染系を用いた実験は依頼した博士研究員が実施せず、行う事が出来なかったが、23年度にSHIV/アカゲザル感染系で観察された予想外の結果を追試した。 以前の研究でSIV感染サルに適用したのと同一の抗ウイルス剤を接種8週後からSHIV感染サルに適用した所、SIV感染サルの血中ウイルスRNA量は2相性に減衰し検出限界以下になったが、SHIV感染サルの血中ウイルスRNA量は3相性に減衰し1000コピー/mlのウイルス量で安定化した(23年度)。このウイルスRNA量の安定化は再現性があるか、3頭のサルで検証した所、2頭のサルでは典型的な高病原性SHIV感染を呈さなかったため解析出来なかったが、1頭のサルは典型的な高病原性SHIV感染を起こした。このサルに抗ウイルス剤を適用した所、23年度に観察したのと同じ血中ウイルス減衰を示した、すなわち、3相性の減衰の後、約1000コピー/mlのウイルス量で安定化した。 このウイルス量減衰の違いはそもそも高病原性SHIVが適用した抗ウイルス剤に抵抗性であるため起こったのか検証するため、3頭のSHIV感染サルに急性期(接種9及び10日後)から抗ウイルス剤を適用した所、ウイルスRNA量は2相性に減衰し、検出限界以下に抑制された。従って、SHIVはこれら抗ウイルス剤に感受性である事が明らかとなった。 高病原性SHIV感染8週後には体内のリンパ球はほぼ完全に枯渇しており、ウイルス感染細胞はマクロファージである事が、以前の研究から予想される。この結果はマクロファージには現行の抗ウイルス剤は効果が無い事を示している可能性があり、基礎生物学的な興味の他にエイズ治療においても重要な知見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は確実に高病原性SHIV感染病態を再現するため、接種ウイルス量の増量及び接種サルの選抜を行ったが、やはり1/3のサルでのみ期待した病態が再現された。現在まで、高病原性SHIV病態を再現したサルは2頭作り出す事が出来たが、統計学的検定に必要な最低3頭には未だ足りない。予想していなかった高病原性SHIV病態再現の困難さが遅れの理由である。 また、本来計画していたSIV実験は担当者が実験を実施しないと言う事態になった。実験担当者のwork ethicsを事前に正しく評価しなかった点が計画変更の理由となった。
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Strategy for Future Research Activity |
SIV実験は時間的に実施が難しくなったが、一方で、SHIV実験から予想外の結果が出つつあり、この知見は基礎ウイルスならびに生物学的興味だけでなく、エイズ治療においても意味のあるものと考えられるため、計画を変更し、SHIV感染実験に絞って、確実な結果を出す。具体的には接種サルの選抜をより厳格に行い、リンパ球のウイルス感受性が特別高い個体を実験に供する事とし、確実に望みの病態のサルを作り出せる様にする。 また、これらのサルの組織学的検索を通して、各組織のウイルス量、ウイルス感染細胞の詳細な同定を行う。
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Research Products
(1 results)