2012 Fiscal Year Annual Research Report
人工細胞膜を用いるがん・エイズの臨床応用を目指した展開
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23300173
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
松本 陽子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (00133562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 浩一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (30279377)
市原 英明 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (70369114)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 癌 / アポトーシス / リポソーム / エイズ |
Research Abstract |
1)カチオン性脂質含有ハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸がん(HCT116)細胞に対する増殖抑制効果と制がんメカニズムをin vitroで検討した。カチオン性脂質含有HLはHCT116細胞の細胞膜に融合してアポトーシスを誘導し、増殖を著しく抑制することが明らかとなった。(Biol. Pharm. Bull., 35, 2097 (2012)) 2)HLのヒト大腸がん(CRC)の肝転移モデルマウスに対する治療効果をin vivoで検討したところ、アポトーシス誘導による治療および延命効果が明らかとなった。さらに、蛍光ラベルしたHL-25を用いた体内動態試験において、腫瘍部位への長時間の選択的蓄積が明らかとなった。(Euro. J. Med. Chem., 57, 143 (2013)) 3)成人T細胞白血病 (ATLL, MT-4)細胞の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討した。肝臓重量測定、HE染色および免疫染色 (CD4, CD25) による組織学的解析においてHL-25の静脈投与により、肝臓での MT-4 細胞増殖を顕著に抑制することが明確となった。さらに、顕著な延命効果 (p< 0.01)、が明らかとなった。(Nano Bull., 1, 120105 (2012)) 4)HL-23のマウス骨肉種(LM8)細胞の肺転移に対する治療効果をin vitroおよびin vivoで検討した。in vitroにおいて、HL-23はLM8細胞の仮足形成を阻害し、遊走・浸潤を抑制することが確認された。in vivoにおけるLM8細胞の肺転移モデルマウスに対するHL-23の静脈投与により、原発巣からの浸潤をアポトーシス誘導により抑止し、肺への転移を著しく減少させることを明らかにした。(Cancer Med., (2013), in press.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイブリッドリポソーム(HL)によるがん治療に関し、(1)in vitroにおいて、カチオン性脂質含有HLがヒト大腸がん(HCT116)細胞の細胞膜に融合してアポトーシスを誘導し、増殖を著しく抑制することが明らかとなった。また、HL-23は、マウス骨肉種(LM8)細胞の仮足形成を阻害し、遊走・浸潤を抑制することが確認された。このように、がん細胞膜をターゲットとしたアポトーシス誘導の制がん機構が明らかになってきている。(2)in vivoにおいて、HLのヒト大腸がん(CRC)の肝転移モデルマウスに対する治療効果をin vivoで検討したところ、アポトーシス誘導による治療および延命効果が明らかとなった。さらに、蛍光ラベルしたHL-25を用いた体内動態試験において、腫瘍部位への長時間の選択的蓄積が明らかとなった。このように、種々の担がんモデルマウスに対する治療効果が得られてきている。さらに、医学部との活発な研究討議により、エイズ関連腫瘍の抑制に関する研究が進行しており、成人T細胞白血病 (ATLL, MT-4)細胞の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討した。肝臓重量測定、HE染色および免疫染色 (CD4, CD25) による組織学的解析においてHL-25の静脈投与により、肝臓での MT-4 細胞増殖を顕著に抑制することが明確となった。さらに、顕著な延命効果 (p< 0.01)、が明らかとなった。以上のように、当初の研究計画通りにおおむね順調に本研究課題は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HLによるがん治療効果に関し、(1)in vitroにおいて、HLの流動性(揺らぎ)およびがん細胞の流動性(揺らぎ)と、HLの抗腫瘍効果に関する多くの事例を増やし、一般即として確立する予定である。詳細なメカニズムについては、疾患細胞およびHLの流動性を、様々な分析法により明らかにすることが可能である。このようにがん細胞膜をターゲットとしたアポトーシス誘導の制がん機構の全容を明らかにしていく予定である。(2)コンピューターシミュレーションにより、分子レベルでの膜融合プロセスを解明を試みる予定である。(3)in vivoにおいて、種々の担がん(乳がんや肝がんなど)モデルマウスを用い、治療効果と治療メカニズムを検討する。(4)正常マウスを用いてHLの代謝系を含む体内動態試験および毒性試験により安全性を検討する。さらに、HLを用いる免疫学的研究として次のテーマを設定し、がん研究で得られた成果と相関させながら研究を進めていく予定である。すなわち、(5) HLの免疫系に及ぼす影響を検討するため、免疫細胞との相互作用をin vitroおよびin vivoで観測していく。(6) HIVおよびその感染細胞に対するHLの抗ウイルス効果を観測し、新しいエイズ治療薬としての可能性を検討する。 このように、がんをはじめとする難治性疾患の細胞膜物性をターゲットとするHLの治療効果を病院および医学部との共同研究により進める。
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Research Products
(23 results)