2011 Fiscal Year Annual Research Report
超分子デバイスと光技術を駆使した微小がんの一期的な診断・治療システムの開発
Project/Area Number |
23300174
|
Research Institution | 防衛医科大学校 |
Principal Investigator |
守本 祐司 防衛医科大学校, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (10449069)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 伸宏 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10372385)
岸村 顕広 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70422326)
伊藤 敬一 防衛医科大学校, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (90260091)
|
Keywords | トランスレーショナルリサーチ / ナノメディスン / 光線力学療法 / 超分子 / がん / 標的化診断・治療 / ドラッグデリバリーシステム / 生体イメージング |
Research Abstract |
本研究では、申請者らの開発してきたDDS型超分子デバイス(高分子ミセル、PICsome)と光増感剤や量子ドットなどを組み合わせ、微小がんの局在診断ならびに光線力学的治療(PDT)を同時に施行できる医療技術を構築し、局所治療の精度を飛躍的に向上させる革新的な標的化診断・治療システムを構築することを目的としている。 本年度は、がん病変を診断・治療するために、光増感剤としてデンドリマーボルフィリンを内包した高分子ミセルを構築(デンドリマーボルフィリン内包高分子ミセル)し、PDTによる優れた殺細胞効果を確認した。加えて、ポルフィリン蛍光を基にした腫瘍の局在診断も可能となった。さらにミセル構造の最適化を行い、血中滞留性を大幅に向上(投与3時間後に投与量の40%以上が血中に存在)することができた。 また、内水相を利用することによって低分子量物質を安定に内包させることができるPICsomeに低分子量光増感剤を内包させた。培養がん細胞を用いた実験では、光増感剤内包PICsomeは効率的に細胞内に取り込まれ、光増感剤単独よりも優れたPDT効果を示すことを雑認した。 さらに装置開発として、マルチスペクトラルイメージングによって蛍光分離イメージを取得できる内視鏡システムを構築した。このシステムによって、内視鏡による蛍光観察のさい問題となる近接効果やエッジ効果(内視鏡近傍に突起やステップ状の構造があると、突起の先端やエッジ部分が、イメージとして映り込む現象)を打消すことができ、生体由来の自家蛍光による背景ノイズを大幅に低減させ、病変検知の感度・特異度を大幅に向上させることができた。開発したシステムは、1024×1024の空間分解能を持ち、秒単位のリフレッシュレート(1 f/s)で画像更新できるので、リアルタイムに蛍光分離イメージングを行うことが可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書提出当初の計画では、近赤外領域(760-900nm)に吸収波長を有する光増感剤を内包した高分子ミセルの開発を予定していた。しかしその後の検討により、近赤外領域に吸収を持つ光増感剤では、強度の高い光を必要とするため被照射組織の温度上昇を招き、腫瘍周辺の正常部位への熱影響が大きくなることが予想されたので、赤色領域(630-680nm)に吸収を持つ光増感剤を使用した。 以後H23年度計画で示した通り、がん病変を診断・治療するための高分子ミセル型光増感剤を合成し、構造の最適化も行った。また、光増感剤を内包したPICsomeも創製できた。さらに、マルチスペクトルイメージングの手法を適用し、雑音成分を効率的に除去してシグナル蛍光のみを抽出することのできる蛍光内視鏡イメージングシステムを開発できた。 以上の進捗状況を鑑みて、研究はおおむね順調に進展していると思料した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を基盤として、次年度以降は腫瘍への集積性により優れた光増感剤の開発を進めていく。高分子ミセル表面にリガンド分子を導入するなどの工夫を行い、がん細胞に効率的に取り込まれる超分子デバイスを創製する。他方、がんの診断技術の開発では、質的診断から量的診断を可能とするシステムを構築していく。PICsomeに量子ドットを内包させた標識デバイスを構築し、さらにこれを本年度創り上げたマルチスペクトルイメージングシステムと組み合わせることで、病変深さの進展を診断するための技術開発を行う。以上の検討により、臨床応用可能な治療デバイスならびに診断技術の確立を目指す。
|
Research Products
(4 results)