2012 Fiscal Year Annual Research Report
超分子デバイスと光技術を駆使した微小がんの一期的な診断・治療システムの開発
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23300174
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
守本 祐司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (10449069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 伸宏 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10372385)
岸村 顕広 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70422326)
伊藤 敬一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 准教授 (90260091)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光線力学療法 / ナノメディスン / 標的化診断・治療 / 生体イメージング / 超分子 / トランスレーショナルリサーチ / がん / ドラッグデリバリーシステム |
Research Abstract |
本研究では、申請者らの開発してきたDDS型超分子デバイス(高分子ミセル、PICsome)と光増感剤や量子ドットなどを組み合わせ、微小がんの局在診断ならびに光線力学的治療(PDT)を同時に施行できる医療技術を構築し、局所治療の精度を飛躍的に向上させる革新的な標的化診断・治療システムを構築することを目的としている。 初年度(H23年度)は、がん病変を診断・治療するための、光増感剤内包高分子ミセルを構築し、マウス担がんモデルを用いたPDT効果を検証した。その結果、従来的な光増感剤(フォトフィリン)と同等以上の腫瘍増殖抑制効果を認めた。第二年度(H24年度)においては、ラット正所性膀胱がんモデルを用いて経内視鏡下にPDTを行い、その効果に関する予備検討を行った。その結果、優れた抗腫瘍効果ならびに低い副作用発現(膀胱壁コンプライアンスへの影響小)を確認した。 他方、第二年度において、内水相を利用することによって低分子量物質を安定に内包させることができるPICsomeに量子ドット(QD)を内包させたQD-PICsome(初年度に構築済み)を用いて、病変の組織内深達度を測定するための診断技術の開発を行った。ゼラチンファントムを用いたがんモデルを用いて、後述する蛍光マルチスペクトルイメージングによって記録されたQD由来の蛍光スペクトルの解析を行ったところ、病変深度の推定が可能であることが示された。 さらに、第二年度において、マルチスペクトラルイメージングによって蛍光分離イメージを取得できる内視鏡システム(初年度に構築済み)の、病態診断能力の検証を行った。その結果、ニトロソアミン飲水投与によるラット食道腫瘍モデルにおける食道粘膜上の腫瘍を検知することができ、高い特異度と感度を有する優れた診断システムであることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書提出当初の計画では、近赤外領域 (760 – 900 nm)に吸収波長を有する光増感剤を内包した高分子ミセルの開発を予定していた。しかしその後の検討により、近赤外領域に吸収を持つ光増感剤では、強度の高い光を必要とするため被照射組織の温度上昇を招き、腫瘍周辺の正常部位への熱影響が大きくなることが予想されたので、赤色領域(630-680 nm)に吸収を持つ光増感剤を使用した。 H23年度には、がん病変を診断・治療するための高分子ミセル型光増感剤を合成し、構造の最適化も行った。そしてH24年度では、正所性病態モデルを用いた臨床使用に近い形での実験検討において有効性を示すことができた。他方、H24年度においては、がんの診断技術の開発では、質的診断から量的診断を可能とするシステムを構築した。すなわち、PICsomeに量子ドットを内包させた標識デバイスを構築し、これをH23年度に創り上げたマルチスペクトルイメージングシステムと組み合わせることで、病変深さの進展を診断するための基礎的技術を開発することができた。 以上の進捗状況を鑑みて、研究はおおむね順調に進展していると思料した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を基盤として、次年度以降は腫瘍への集積性により優れた光増感剤の開発を進めていく。高分子ミセル表面にリガンド分子を導入するなどの工夫を行い、がん細胞に効率的に取り込まれる超分子デバイスを創製する。他方、マルチスペクトラルイメージングによって蛍光分離イメージを取得できる内視鏡システムでは、スペクトルアンミキシングによる機構を搭載して、特異度・感度をさらに向上させた、がんおよびがん以外の病変へも応用できるイメージング技術への開発を進めていく。また、以上の検討により、臨床応用可能な治療デバイスならびに診断技術の確立を目指す。
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Research Products
(9 results)