2011 Fiscal Year Annual Research Report
疾患に関連するオリゴ糖の効率的な生産と医療用デバイスの作製
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23300176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畑中 研一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70167584)
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Keywords | オリゴ糖 / インフルエンザウイルス / シアリルラクトース / 細胞培養 / ガングリオシド / テトラフェニルエチレン / 診断分子 / クリック反応 |
Research Abstract |
疾患に関連するオリゴ糖の合成を行った。インフルエンザウイルスをターゲットとして、α2→6結合したシアリルラクトース(ヒト型)とα2→3結合したトリ型を生産した。機能分子化を考慮して、アグリコンの末端にアジド基を導入した12-アジドドデシルラクトシドを化学合成し、B16細胞培養系に投与して2日後の培地中から2→3結合したシアリルラクトシドを得た。また、12-アジドドデシルラクトシドにCMP-シアル酸とシアル酸転移酵素を作用させて、2→6結合したシアリルラクトシドを得た。次に、ポリオーマウイルスのうちJCVのみが選択的に結合するオリゴ糖であるGM1とGM2を12-アジドドデシルラクトシドを用いて、ハイパーフラスコで培養しているRERF細胞およびディッシュで培養しているCOS7細胞により合成した。さらに、筋ジストロフィー症において欠損するオリゴ糖SA-Gal-GlcNAc-Manの合成を開始した。12-アジドドデシル基を有するGlcNAc-Manを合成し、GI-1細胞およびONS細胞に投与した。 続いて、オリゴ糖を有する機能性分子の構築を試みた。分子の凝集により蛍光を発するテトラフェニルエチレンに4残基のシアリルラクトースを導入した。テトラキス(4-プロパルギルオキシフェニル)エチレンと12-アジドドデシルシアリルラクトシドをクリック反応することによって、凝集誘起蛍光性糖鎖化合物を合成した。また、薬剤の副作用を検出する「診断分子」の構築を行った。GM3生合成に対する影響にはドデシルラクトシドを「診断分子」として用いることができることを発見した。さらに、ウイルスを補足するための糖鎖ポリマーを合成した。細胞により糖鎖伸長を行った12-アジドドデシル基を有する化合物をプロパルギル基を有するポリグルタミン酸とクリック反応することによって糖鎖ポリマーを合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、培養細胞を利用して合成される生理活性オリゴ糖を効率的に生産する方法を確立し、これらのオリゴ糖を利用して疾患の診断や治療などに寄与するデバイスを構築することを目的とする。 本年度は、上記目的に沿って、インフルエンザウイルスをターゲットとしたα2→6シアリルラクトース(ヒト型)とα2→3シアリルラクトース(トリ型)、ポリオーマウイルスに結合するGM1とGM2を合成した。さらに、筋ジストロフィー症において欠損するオリゴ糖SA-Gal-GlcNAc-Manの合成経路を確立し、中空糸培養法による合成を開始した。一方凝集誘起蛍光性糖鎖化合物を用いたインフルエンザウイルスの検出に成功し、診断分子や糖鎖ポリマーの構築を行った。 以上の結果より、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
【オリゴ糖鎖を用いた医療デバイスの作製と性能評価】に関して、以下のような研究を行う。 (1)インフルエンザウイルスの抗体で修飾したマイクロビーズにヒト由来のウイルスおよびトリ由来のウイルスを吸着させる。これらに対して2種類糖鎖(α2→3およびα2→6結合したシアリルラクトシド)を有する凝集誘起蛍光化合物を作用させ、フローサイトメーターなどを用いて検出する。特にトリ由来のインフルエンザウイルスに関しては、α2→6結合したシアリルラクトシドとの結合能を詳しく調べることにより、ヒト細胞への感染性を判断する用途に適しているかどうか検討する。トリインフルエンザウイルスの捕捉に関しては、空気中からの捕捉が可能なマイクロビーズの作製を試みる。 (2)ドデシルグリコシドを診断分子として、各種薬剤の効果について調べる。種々の細胞に薬剤とドデシルラクトシドを同時に投与し、細胞外に放出される糖鎖伸長分子を分析して、糖鎖合成に対する薬剤の効果を調べる。 (3)合成した糖鎖ポリマーを材料の表面に固定化し、ウイルスの吸着を検討する。GM1aまたはGM2を有するポリスチレンでプレート表面を修飾し、ウイルスを吸着させた後、それぞれの蛍光抗体を用いて吸着量を定量する。
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Research Products
(5 results)