Research Abstract |
本研究では, 申請代表者らが開発に成功したプログラムリンパ節転移マウスを使用し, 薬剤封入型ナノバブルと超音波を用いたリンパ管経由による転移リンパ節内の腫瘍細胞を標的にした超選択的な分子導入法の開発を目的にする. プログラムリンパ節転移マウスとは, 脹骨下リンパ節に腫瘍細胞を接種することで, リンパ管を介して腋窩リンパ節に腫瘍細胞が転移するというモデルである. この転移特性を明らかにするために, 接種する細胞濃度, 接種速度, 脹骨下リンパ節の大きさを因子として転移能を評価し, この3因子の組合せで決定される因子が転移能を決めることを明らかにした. また, 転移により腫瘍血管密度が増加し, この密度増加を指標に早期転移診断法や検出機器の開発の可能性が示唆された. つぎに, ナノバブルと蛍光分子を脹骨下リンパ節から腋窩リンパ節に送達させて, 超音波照射により転移腋窩リンパ節内の腫瘍細胞に抗腫瘍分子を導入するという方法論を確立した. まず, 外来分子が腋窩リンパ節に導入されるかを確認するために, 蛍光分子であるTOTO-3とナノバブルを脹骨下リンパ節に投与し, ナノバブルが腋窩リンパ節に到達した段階で超音波を腋窩リンパ節に照射した. その後, 腋窩リンパ節を取り出し, 共焦点顕微鏡で導入部位の確認をおこなった. TOTO-3はリンパ洞の外側にあるリンパ球に導入され, 導入効率は超音波とナノバブルの組合せが最も高かった. 導入されたリンパ球の同定をおこなうために, CD3とCD8の発現するリンパ球に着目し, ローサイトメトリーで定量をおこなった. CD3-/CD8-リンパ球への導入効率が最も高く, CD3+/CD8+のリンパ球の導入効率が最も低いという結果が得られた. 本研究成果は, リンパ球への薬剤送達法の可能性を示唆するものである.
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