2013 Fiscal Year Annual Research Report
キャピラリーレンズを用いた高輝度単色マイクロX線源の開発
Project/Area Number |
23300186
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長谷川 純 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90302984)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小栗 慶之 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (90160829)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | キャピラリーレンズ / 陽子線励起X線 / 蛍光X線分析 / 2次元元素マッピング |
Research Abstract |
平成25年度は,前年度までに整備された45度偏向電磁石を用いた準単色のマイクロX線ビームの照射装置を構築し,原理実証実験を行った。具体的には,陽子線をX線に変換するための金属薄膜標的およびビームモニター用の各種計測器を保持するための真空チャンバーを新規に設計・製作した。また,発生した蛍光X線をその場観測するためのシリコンX線検出器,分析用の試料を保持するための3次元微動ステージ,試料を光学観測するための長ワーキングディスタンスの顕微鏡を設置し,微量元素分析システムを構築した。これにより,例えば,液中に置かれた細胞などの試料にマイクロX線ビームを照射し,そこから発生する蛍光X線をその場観測することが可能になった。装置の有用性を示すデモンストレーション実験として,水耕栽培された浮き草(Lemna minor)を観測対象に選び,水中に人工的に付与したコバルト元素が浮き草が吸収される様子を調べた。X線変換用の金属標的には銅を用い,銅のK X線をポリキャピラリーレンズを通して浮き草の葉の表面に集光・照射した。その結果,浮き草に吸収されたコバルト元素から発生する蛍光X線の検出に成功し,その信号強度の時間変化を定量的に測定することができた。吸収されたコバルト元素の濃度は葉脈部と葉のその他の部分で大差はなかったが,経過時間とともに徐々に飽和値に近づくことが明らかになった。この測定において,植物に含まれるカリウムやカルシウムと言った他の主要元素による蛍光X線はほとんど見られず,単色X線を一次励起光源として用いることで特定の元素濃度を高感度で測定できることを実証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定より若干遅れ気味であった単色X線照射装置の構築を平成25年度半ばまでに完了し,それを用いた応用研究の一例として,浮き草の葉に吸収されたコバルト元素の微量元素分析を行った。これにより本研究課題で提案・開発した単色のマイクロX線ビームを用いた分析手法の有用性を示すことができた。この成果は,国際会議(ECAART11)で報告され,国際的に高い評価(Best Poster Prize)を得た。研究協力者として参加している博士課程学生の献身的な努力もあり,本研究課題は当初の予定通り順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発した単色X線照射装置の現在の課題は,発生する一次X線の強度の増強である。測定対象の元素の濃度にも依るが,現状では1回の測定に1時間程度の時間がかかっており,多数回の測定を必要とする2次元微量元素マッピングを行う上での大きな障害となっている。この問題を解決するために,陽子線を発生するタンデム加速器のビーム輸送系の最適化を行い,X線変換用の金属薄膜標的上での陽子線の照射強度を大幅に上げることを計画している。
|