2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己運動知覚生成と脳神経回路網活動との因果の解明と臨床応用への基盤的研究
Project/Area Number |
23300202
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
金子 文成 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (00344200)
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Keywords | リハビリテーション / 自己運動錯覚 / 知覚 / 体性感覚 / 運動 / 経頭蓋磁気刺激 / 視覚 / 脳 |
Research Abstract |
当該研究は,体性感覚入力によって,仮想現実的に被験者の脳内に自己運動知覚の表象を誘起する方法を応用し,自己運動知覚の神経科学的機構の解明に寄与することを目的とした。随意もしくは他動的に行われた関節運動では,感覚受容器からの信号が求心性に入力され,皮質感覚野に到達する。そして,複数入力された感覚情報は頭頂連合野で統合される。本研究はさらにこれらの脳賦活部位を刺激することによって,逆に自己運動知覚と脳活動との因果を解明しようとするところに意義があった。将来は,脳卒中片麻痺症例や長期臥床によって運動機能低下を来した症例を対象とした運動機能回復治療方法として発展させるための基盤的研究である。 平成23年度は,機能的脳画像によって,自己運動知覚を引き起こした時に活動する脳部位を明らかにした。ここで明らかにされた脳部位のうち,大脳皮質に対しては非侵襲的に興奮性を操作する刺激を与えることが可能であるため,それらの脳部位に対して4連発経頭蓋磁気刺激(4TMS),もしくは経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を行う実験を開始した。4TMSまたはtDCSによって,標的部位の興奮性が変化しているかどうかを皮質運動野に対する単発の経頭蓋磁気刺激,体性感覚誘発電位により確認する実験を行なった。他方,自覚的な自己運動知覚強度の計測には,腱振動刺激を用いた運動錯覚を応用した。腱振動刺激で誘起した運動錯覚を反対側で運動として再現させ,その再現した運動の速度を計測した。これらについては,現在も実験を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において,機能的磁気共鳴像による研究で自己運動錯覚を誘起する際に血流の増加が認められる脳部位を明らかにした。その脳部位の一部(大脳皮質)に対して,非侵襲的脳刺激によって選択的に興奮性を操作し,心理物理的に計測する自己運動錯覚の強さが変化するかどうかを明らかにする実験を開始し,途中まで進行している。計画通りに研究は進展しているものの,十分な業績となっていないため,区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,当初計画していた通りに実験を遂行する。ただし,計画書に記していなかった点として,特定の大脳皮質領域を刺激した影響が,他の皮質領域に表出するということがあるため,より綿密に実験方法を検討する必要がある。例えば,運動野に対する興奮性の操作の影響を,運動野に対する刺激で得られた運動誘発電位を指標として検討するだけでなく,感覚野に起源を持つ体性感覚誘発電位などを指標としても検討する。このことは,今回標的とする脳部位である運動前野や下頭頂小葉についてもあてはまる。全体的に実験の量は多くなるが,技術的には問題ない。
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Research Products
(20 results)