2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23300208
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小池 康晴 東京工業大学, ソリューション研究機構, 教授 (10302978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 安弘 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (70293248)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 筋電図 / 計算論 / シミュレーション / 在宅医療 / 遠隔システム |
Research Abstract |
本研究は、リハビリ対象者の運動データの科学的・定量的な計測や解析に基づく「根拠のあるリハビリ」の提案と、それを用いて対象者が一人でもリハビリができる自立したリハビリシステムの構築に必要な要素技術開発を通して、生涯健康で暮らせる社会づくりへの貢献を目指す。そして、新たなリハビリテーション (リハビリ) システムの提案により、高齢者や障害者などのリハビリ対象者のQOL(生活の質) 向上だけでなく、医療従事者の負担の軽減を通して、生涯健康で暮らせる社会づくりへの貢献を目指す。 平成 22 年度の診療報酬改定では、医療の再建や医療従事者の負担軽減などが、医療に関する重点課題として掲げられている。具体的には、医療の透明化と患者一人一人の生活の質への配慮を求めるものであり、さらに、在宅医療や訪問介護など医療と介護の連携を推進するものである。 本提案は、リハビリ対象者自身の運動データを用いて、脳科学と工学の併用による計算論的モデルによって解析したデータを、リハビリの効果やプログラムの判断基準にしようというものであり、言わば理論+データ的アプローチを目指すものといえる。このアプローチは、リハビリの効果が対象者にもデータとして把握できると いう点において医療の透明化を促すと考えられる。また、医師と対象者の相互の連携によって対象者が自立してリハビリができるようになれば、在宅医療の促進を通して医療費の軽減および対象者の生活の質への配慮が実現するといえる。最終的には、在宅で自立してリハビリができるシステムへの改革として、運動療法における定量的データの収集と解析、さらには、それに基づくリハビリプログラムのアップデートが遠隔でも行えるシステムの構築を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成目標は、筋電信号からの運動推定、運動データから患者にあった筋活動の推定、「自立リハビリテーション訓練システム」の開発の3点から成る。 平成24年度までに、筋活動からの運動推定および、筋活動の推定を行ってきた。筋活動からの運動推定においては、手首の筋骨格系モデルを構築し、計算機シミュレーションにより2次元の運動をトルクだけでなく、関節の釣り合い位置、関節の剛性も同時に推定するモデルを構築した。また、このモデルを用いて、機械学習の技術を用いて、手首のダイナミクスモデルや制御のためのフィードバックコントローラ、また、姿勢から筋活動を直接予測するモデルの構築を行った。そして、軌道の特性がヒトと同じであること、さらに、筋活動の特徴として、それぞれの筋肉の活動が運動方向により変化し、その変化の仕方が三角関数で近似できることを確認した。 さらに、モデルの一部を取り除くことにより、遺伝子組み換え動物の脳の疾患モデルのように、運動系の一部が損傷した様子を模擬することができる。提案モデルにおいては、ダイナミクスモデルやフィードバックコントローラなどがうまく働かないときの様子を計算機上で計算できるようになった。その結果を患者の運動データと比較することができれば、疾患の原因をモデルから説明できる可能性がある。 これにより、当初の目標であった、筋電信号からの運動推定、運動データから患者にあった筋活動の推定は、計画通り実施することができた。 リハビリテーション用インタフェースの開発においては、SPIDARというハプティックデバイスを用いて、患者の手に装着が容易で、動きが簡単に計測でき、課題に応じて力が加わるシステムを試作した。手を固定する器具について改良を重ね、位置と力が正しく計測できる新しいグリップの形を構築した。最終年度の在宅で自立してリハビリができるシステムの構築の準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的には、在宅で自立してリハビリができるシステムへの改革として、運動療法における定量的データの収集と解析、さらには、それに基づくリハビリプログラムのアップデートが遠隔でも行えるシステムの構築を計画している。 リハビリテーション用のインタフェースの開発ができたため、今年度は実際にリハビリテーション中のデータを計測し、必要なパラメータを抽出し、可視化可能なデータを遠隔に送り、医師が診断できる情報に変換する。また、診断に基づき、インタフェースのパラメータやリハビリプログラムを更新し、現状にあったリハビリテーションが自宅でも行えるように、患者と医師の間をインターネットを介して直接つなぐシステムの構築を目指す。 健常者のデータ収集から始め、データを解析してその特徴パラメータだけを転送するシステム、あるいは、データをすべて遠隔に転送し、遠隔地で医師などが直接、インタラクティブに解析するシステムを構築する。どちらのシステムが良いか、データの量などに応じてシステムの構成を検討する。 また、手首に外力を加える力が現在所有する超音波モータでは小さいことから、健常者のデータの収集のために、大きな力を出すことができるハーモニックドライブなど、別のモータについても検討して、よりよいシステムを構築するようにする予定である。
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Research Products
(9 results)