2012 Fiscal Year Annual Research Report
障害程度及び受障時期別にみた視覚障害者の音源定位能の検討と移動支援装置への応用
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23300212
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
田内 雅規 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (00075425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大倉 元宏 成蹊大学, 理工学部, 教授 (30119341)
中村 孝文 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (70144061)
河田 正興 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (70461241)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 視覚障がい者 / 音源定位 / 反響定位 / 心理的負荷 / 音響ビーコン / 歩行 / 誘導 / ストレス |
Research Abstract |
平成24年度は、音源定位の学習効果の時間的経緯に関する検討、自動化音源提示装置の開発と実用化の検討、及び音響ビーコン使用時負荷と支援装置開発に関する基礎的検討を行った。 音源定位の学習効果の時間的経緯に関する検討については、標的とするロービジョン者をやや上回るが全盲者より劣る晴眼者を被験者として研究を行った。1週間以内のフィードバック音源定位訓練によって音源定位能は著しく向上したが、その訓練効果がどの程度維持されるかを検討した結果、訓練後効果は徐々に減少し、約1か月でほぼ消失した。この結果から、視覚を使う状態が聴覚的注意の維持を阻害すると考えられた。また、訓練によって得た効果が訓練位置以外にも汎化されるかどうかについては現在否定的な結果が得られており、更に詳細な検討が必要である。自動化音源提示装置は、スピーカー空間配置の制約を回避するため、計算により少数のスピーカーを用いて3次元空間の任意の位置に音源を表示させるものである。一昨年にハードウェアの構築を行ったが、本年度はそのソフトウェアプログラム開発を行い、完成した。これによって、音源定位能の計測における空間的制約を回避でき実験の自由度を著しく高めることができた。音響ビーコン使用時負荷と支援装置開発に関する基礎的検討に関しては、晴眼者を対象とした先行研究において偏軌の原因としてマスキング差が示唆されたので、本研究では単独行動に慣れている視覚障害者の参加を得て晴眼者と同様にマスキング差の影響がみられるかどうか、ダイナミックな条件下での音源定位能の測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロービジョン者に見られる低い音源定位能を向上させるフィードバック訓練法を開発したが、現在その維持や汎化に関するデータが蓄積しつつある。これによって聴覚のサブモダリティとしての音源定位の基本が明らかにされつつあると同時に実際の生活機能としての音源定位の向上や維持の方法論が確立する可能性が出てきた。 音源定位能と受障時期や障害程度との関連については、ロービジョン者と全盲者について検討を進めている。現在一定の傾向を見出すまでには至っていないが今後データを蓄積することで対象者間の差異の存在如何を明確にする。自動化音源提示装置の開発を行ってきたが、汎用性の高い音源定位実験装置として利用可能な状態になった。これを用いることによって実験の効率が大幅に向上するとともに、今後屋外環境のシミュレーションについても可能性が出てきた。 音響ビーコンの最適化については、前方から誘導音を発し左右耳のマスキング程度が異なる条件下で、音源に向かって直進する課題に対して、単独行動のある視覚障害者においても晴眼者と同様の結果が得られた.傾向は類似していたが、偏軌の程度は晴眼者に比べて小さく,音の利用経験の差のあることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であるので、当初目標への見直しを行い、各研究小項目に関して以下の様な推進方策を持って臨む。 フィードバックを用いた音源定位訓練効果の全容を明らかにする。すなわち、汎化の研究を進めることによって聴覚空間と脳内マッピングの関連性が明らかになると考えられる。また、訓練効果の減衰過程が明らかになったので、その効率的な維持が可能な訓練手法の開発を検討する。 自動化音源提示装置が使用できる状況になったため、この装置を用いた音源定位の計測と訓練を実施する。本装置を用いて研究効率の向上や測定空間次元(水平、垂直、奥行き方向)について精査することを試みる。 音響ビーコンについては、二次課題法による心理的ストレスの測定評価に研究の力点を移す。二次課題にはタッピングを用い、心理的ストレスと音源定位能の関連を評価して音響ビーコンの最適化(スピーカー配置、音響提示方法)を検討する。
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Research Products
(6 results)