2011 Fiscal Year Annual Research Report
随意運動に先行する脳活動の同定―セントラルコマンド発生機構の探索
Project/Area Number |
23300217
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松川 寛二 広島大学, 大学院・保健学研究科, 教授 (90165788)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小峰 秀彦 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (10392614)
定本 朋子 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (30201528)
浜岡 隆文 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (70266518)
梁 楠 広島大学, 大学院・保健学研究科, 助教 (70512515)
|
Keywords | セントラルコマンド / 脳活動の計測 / 循環調節 / 随意運動 / スポーツ科学 |
Research Abstract |
心臓血管系は随意運動の開始と同時に応答する。自律神経系や効果器での時間遅れを考慮すると、高位中枢は少なくとも運動開始の6-10秒前には活動を開始し、自律神経系へFeedforward制御信号(セントラルコマンドと呼ぶ)を送らねばならない。このセントラルコマンド発生機構を探索するためヒト及び実験動物を用いた研究を推進した。 ヒトを用いた研究 1.随意運動を精密に評価するために、エルゴメーターの回転角度変化や発揮された筋力・筋電図を連続的に記録できる解析システムを作成し、最大運動能力の20-60%強度で自転車エルゴメーター運動を実施した。 2.高い時間分解能を持つ2チャンネル型近赤外分光法(NIRS)を用いて、運動開始時にみられる大脳皮質前頭前野の局所酸素化ヘモグロビン動態(Oxy-Hb)を計測した。Oxy-Hbは局所の脳組織血流量を反映し間接的に脳活動量と対応する。その結果、大脳皮質前頭前野の脳活動が運動開始時に約10秒先行することを明かにした。 3.全頭型NIRSイメージングを用いて大脳皮質全体にわたる52チャンネルのOxy-Hb動態を同時計測し、随意運動と関連する皮質活動領域をリアルタイムでマッピングした。その結果、前頭前野活動は随意運動に先行することを確認したが、運動皮質等の運動中枢は随意運動に先行した活動を示さなかった。この所見は随意運動開始前後における大脳皮質活動領域の変容と推移を示唆した。 動物を用いた研究 自発運動開始に先行する脳活動の実証とセントラルコマンド発生に関する神経伝達機構を動物実験で調べるため、中脳腹側被蓋野(VTA)にレーザー血流計プローブを埋め込み局所組織脳血流量を計測した。その結果、自発運動開始に先行して組織血流量は増加したので、自発活動と対応する中脳VTA活動が存在しこれがセントラルコマンド発生と関係することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セントラルコマンド発生機構の探索という当初の研究計画を進めるため、2チャンネル近赤外分光計を用いて随意運動中の大脳活動を記録した。その結果、随意運動に約10秒先行する大脳皮質前頭前野活動を同定した。次に、全頭型近赤外分光計を用いて随意運動と関連する大脳皮質領域をマッピングした所、前頭前野活動は随意運動に先行することを再確認したが、運動皮質等運動中枢は随意運動に先行した活動を起こさないという新知見を発見した。
|
Strategy for Future Research Activity |
近赤外分光計は局所酸素化ヘモグロビン濃度を記録する。この計測法は高い時間分解能を有するがその空間分解能は低くその対象は大脳皮質の浅層領域に限定されるため、深部大脳皮質活動や大脳基底核および間脳・脳幹の活動を高い空間分解能で計測することができない。これらの問題点を補完するために、今後研究分担者達と機能的核磁気共鳴法(f-MRI)や脳磁図(MEG)を用いた多面的な共同研究を進めたい。また実験動物を用いた基礎的研究を並行して進めセントラルコマンド発生機構を探索したい。
|
Research Products
(7 results)