Research Abstract |
運動に関わる要因としてセントラルコマンドが運動時の体温調節中枢に及ぼす影響を検討した.被験者は健康な男子学生とし,環境温25C°,相対湿度50%の環境制御室内で実験を実施した.被験者は環環境条件に慣れるためにこの環境下で約50分間安静を保持し,その間に生体パラメータ測定用センサーを装着した.その後,最大酸素摂取量50%の自転車運動あるいはトレッドミル運動を実施した.運動時間は30分間とし,2条件の実験を2日以上の間隔をあけた.条件1として被験者に最大酸素摂取量の50%負荷であることを告げる,条件2も最大酸素摂取量の50%負荷であるが,被験者には60%負荷であることを告げる.条件2と条件1は同じ運動強度であるが,条件2では負担が大きいと勘違いし,セントラルコマンドがより大きくなると考えられる.この勘違いをさらに明確にするために運動中の心拍数を数値で提示した.その際,条件2の心拍数は実際の値(例えば,条件1)より約10拍/分高くなるようにした.測定項目は心拍数,血圧,自覚的運動強度,体温(食道温),皮膚温,発汗量・皮膚血流量(胸・前腕),全身発汗量および脳活動状態とした,自覚的運動強度・発汗量は条件2の方が大きい値を示したが,その差は条件間で大きいものではなかった.皮膚血流には顕著な差がみられなかった.これらの結果は動的運動時の発汗中枢にはセントラルコマンドが大きく影響しない可能性を示している,また,計画にあったように精神性負荷との違いについても,暗算や掌握運動を用いて検討したが,負荷方法などで十分な結果が得られなかった.方法や結果の解釈において,海外研究協力者としてKenny GP(オタワ大学)他に,Taylor NAS(ウロンゴン大学),Green D(西オーストラリア大学),Rossiter H(リーズ大学)の助言を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた負荷方法で実験を実施し,それに基づく結果が得られた.しかし,前述のように条件2における負荷提示方法として,実験の順序も含め,課題が残された点,また,海外研究協力者の助言によりセントラルコマンドと精神性ストレス(平成25年度の実験)の違いが明確でない,との指摘を受けた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23・24・25年度と3年間で運動に関わる要因と精神性要因が運動時の体温調節中枢に及ぼす影響を明らかにしようとしているが,23年度において前述のような課題がみつかった.そこで,各年度の主な実験に加えて,それまでの研究で出てきた課題を解決するための実験も,次の年度に計画し,全体として目的を達成できるように工夫をする.さらに,連携研究者(西保 岳・井上芳光),海外研究協力者(昨年度と同様の研究者とGeorge K:リバプール・ジョン・ムーア大学,Dr.HaanA Dr.Wust R:アムステルダム自由大学など)の助言を得て,研究内容をより普遍的なものにしていく予定である.
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