2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23300233
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
木内 明 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (70298181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷釜 尋徳 東洋大学, 法学部, 准教授 (40527933)
石井 隆憲 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (70184463)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 武道 |
Research Abstract |
24年度は、木内は韓国に伝播した中国武術と気功を、石井はベトナムに伝えられた日本の空手を、谷釜は日本国内にてブラジルから導入されたグレーシー柔術の調査を実施した。 それぞれ前年度までに収集した情報の分析結果とそこから得られた課題に基づき、新たな方針の下に現地フィールド調査にあたった。木内は中国武術が韓国に伝播したルートや人物を確認し、アジア大会の競技種目に組み込まれ制度的な導入が始まる80年代末までに、個々の武術家が散発的に伝えていた状況を明らかにした。まだ韓国と中国の国交回復以前であり、かろうじて往来が可能だった中国在住の朝鮮族が偶発的に伝えていた実態も明らかにしている。その上で、異文化である中国武術が韓国社会に受け入れられるにあたり、いかなる文化的障壁が介在し、それが武道の技術や思想にどのような影響を与えたか、またその過程でどのような変容がもたらされたかをインタビューの情報をもとに考察した。 石井はベトナムに伝えられた空手が、日本でオーソドックスと認識される空手とは異なるスタイルで行われている実態をフィールドワークによって確認している。日本の空手とは異なるものの、ベトナム社会においては標準スタイルとして認識され、今なお独自に発展しながら普及範囲を広げている。日本の伝統的な精神性と不可分であるかのように受け止められがちな武道でありながら、礼節などの日本的な価値基準は切り離され、ベトナム人の解釈によりベトナム空手独自の異なる哲学が新たに付与されていた。 谷釜は、かつて日本からブラジルに伝えられた柔術が、ブラジルで独自の発展を遂げながら固有のグレーシー柔術として確立し、その後日本に流入した経緯や変遷について文献記録を中心に調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究担当者間で達成度が少しずつ異なる。日本に再流入したグレーシー柔術に関しては歴史的な経緯などを中心に順調に情報の収集が進み、これまでにない新たな武道の変容スタイルが確認されている。ベトナムの空手については、現地調査に基づく豊富なデータが整理されつつあり、一足早く理論化に向けた分析の段階に入っている。その一方で、韓国については、韓国固有の気功の歴史的な変遷、中国武術の導入と、研究対象を二つ設定していたため、その分だけそれぞれの情報量は他に比べ少ないことは否めない。 全体としては、想定したペースの範囲内で進んではいるものの、個別のフィールドにて採録された情報を各分担者が整理する過程にあり、まだ理論的に収斂する段階には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
各フィールドにおける現地調査を継続する傍ら、理論化に向け研究分担者間での問題意識を今まで以上に共有していきたい。これまでは、理論を整理する際に、個別の調査地の実態を念頭に置くあまり、研究チームとしての共通する問題意識が希薄になりがちで、変容理論について論じるにあたり、武道技術や思想、社会組織等に分散され、論点を絞ることが難しかった。 今年度は、秋以降に一月に一度以上の割合で、研究集会を開催することを考えている。新たに提示された文化変容に関する理論を検証すると共に、武道や伝統文化の変容に問題意識を持つ研究者を積極的に招き、各分担者が個別に調査している武道に共通する理論的な助言を得て参考としたい。
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Research Products
(4 results)