2013 Fiscal Year Annual Research Report
離れた家族の非対称的な生活世界を緩やかにつなぐコミュニケーション方式の研究
Project/Area Number |
23300263
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
甲 洋介 法政大学, 国際文化学部, 教授 (70343613)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コミュニケーション支援 / 質的研究 / フィールド調査 / QoL / 生活世界 |
Research Abstract |
本研究の目的は、何らかの経緯により異質な生活世界を構築するに至った家族を支援する新しいコミュニケーション方式と、それを家族の日常生活に無理なく埋め込む方法、を構築することである。血縁、婚姻、居住状況を基礎に置く古典的な家族形態は、近年、急速な変容を遂げ、家族のあり様の多様化を背景に、さまざまな原因・理由によって、家族成員の形成する生活世界の均質性を前提としにくくなりつつある。家族成員の生活世界の自然的な非対称性を考慮したコミュニケーション支援方式の研究は重要性を増している。 本研究は、家族が他の家族成員の気分や気配を感じとる際の手掛かりとなる多様な感覚情報を家族のつながり感の形成に寄与するものとして着目し、(A)家族成員にとって特別な意味を持つ生活風景・人物・習慣・モノ・出来事を含む家族の「愛着」対象を明らかにする『質的調査研究』と、(B)それらを複合的な多感覚情報として伝達・表現し合う『コミュニケーション支援方式の基礎研究』、の2つを両輪として、研究を推進している。 今年度の研究成果の社会還元活動として、①長期入院児童とその家族を対象に実施したフィールド調査に基づいて、非対称的な生活世界を持つ両者を支援する新しいコミュニケーション支援方式を試作し、その成果を国際学会HCIにフルペーパーとして投稿し受理され、ドイツの出版社から出版されたこと、②弱視者を対象とした質的調査を実施し、QoL向上を目的とする支援技術のコンセプト設計を行い、その研究成果を国際学会に投稿し受理されたこと、の2つが挙げられる。また、副次的な国際的貢献ではあるが、国際会議 ICCAS (International Conference on Control, Automation and Systems)から国際論文審査委員への招聘を受け、プログラム・コミッティとして現在活動中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の取り組みの特色である、『質的フィールド調査研究』と『コミュニケーション支援方式の技術研究』を組み合わせた研究方法論を、これまで順調に実践してきており、コミュニケーション支援方式についても具体的なコンセプト設計を行い、そのいくつかを試作システムとして実際に製作した。国際学会への論文投稿を中心にこれらを研究成果として着実に残しつつある。 質的調査で得られたデータの分析・考察については、言うまでもなく今後もさらなる深化が必要であると考えている。同時にまた、長期的な技術課題と短期的な課題を切り分け、本研究課題期間における研究成果を着実に残すとともに、広い視野に立った長期的研究課題の発見・明確化に取り組むことも重要であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究期間において、 (a)家族構成員の視点から捉えた非対称的な生活世界を明らかにするために、質的研究手法を駆使した調査研究を行う。最終年度にあたるため、新たな調査対象を開拓するよりも、前年度までのフィールド調査を補完する追加調査に力点をおく (b)異質な生活世界を持つ家族構成員を緩やかにつなぐコミュニケーション支援の技法を、プロトタイプとして具体化する (c)以上の2点に重点をおいた活動を行い、質的インタビューによる研究成果および、コミュニケーション・キューを伝達・変換・表現する方式にかんする現時点までの研究成果を国際会議で論文として公表し、関連領域における活性化を図ることを通して、研究プロジェクトとしての研究成果の集約を行う。 質的研究にかんしては、調査対象者のサンプル拡大よりも適切な対象への丁寧な質的調査を心がける方針である。
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