2011 Fiscal Year Annual Research Report
食品の嗜好特性に寄与する匂い物質と呈味物質間相互作用の官能的・化学的解析
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23300269
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
久保田 紀久枝 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (90008730)
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Keywords | ニンジンの苦味 / 匂いと味の相互作用 / バジル / スープの風味増強 / 官能評価 / 香気寄与成分 / キャピラリーGC分取 |
Research Abstract |
我々は五感を働かせて食品のおいしさを認知するが、その中でにおいと味は化学成分の刺激による感覚で、味とにおいが相互に関わりあい主たる風味を形成していると言われているが、そのメカニズムに関する化学的知見はまだ非常に少ない。本研究は、少量添加で食品の風味改善効果をもつ香辛料や独特の味やにおいをもつ野菜類に着目し、主に、におい成分による呈味あるいは風味への影響について分子レベルで検証し、味覚や嗅覚機能の解析や寄り嗜好性の高い食品製造に資する基礎的データを集積することを目的とする。23年度は、野菜および香辛料をスクリーニングし、数種の野菜や香辛料の香気成分の化学的分析を行うとともに呈味との関連を官能評価で調べ、以下の結果について学会で報告した。ニンジンは独特の匂いと苦味といわれている不快な味があり、子どもに嫌われる野菜のひとつである。加熱ニンジン香気に寄与する主要14成分を同定し、再構築液を調製した。苦味モデル液としてカフェイン溶液を調製し、その苦みに対する再構築液の匂いの影響を調べた。匂いがカフェインの苦味を伴う不快な味刺激を強めることが示され、ニンジンの苦みと感じられる不快な味に味成分だけでなく、香りも大きく関与していると推測された。14成分のうち2成分に顕著な影響が認められ、現在精査を進めている。また、バジル香気成分については、トマトジュースと市販のチキンスープ濃縮物より調製したトマトスープをモデル液として、その呈味に対するバジル香気の影響を分子レベルで調べた。キャピラリーカラムを用いたGC分取により香気成分を分画し、顕著な風味増強効果が認められた画分について精査し、単一成分で有意な風味増強作用をもつ化合物を見出した。現在その作用について詳細に検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野菜の呈味に関与する香気成分やブイヨンの風味に関与するスパイスの香気成分について分子レベルで解析が進み一部については学会で発表し、論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
食品の呈味に影響を与える香気成分を分子レベルで探索する研究をさらに推進する。まず、研究対象食品を広げ、多様な呈味と相互作用する香気成分を探索する。 また、味とにおいの相互作用の評価において、呈味変化の評価は香気変化の評価よりも難しく、より明快な評価法の開発が課題である。今年度は評価用語の見直し、パネルの訓練方法の改良を図る。
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