2011 Fiscal Year Annual Research Report
食品の抗酸化力統一指標を用いた野菜の抗酸化力の評価と食事管理への活用に関する研究
Project/Area Number |
23300270
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
菊崎 泰枝 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (60291598)
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Keywords | 抗酸化力 / 活性酸素吸収能力 / ORAC / 野菜 / 加熱調理 |
Research Abstract |
現在わが国では食品の抗酸化力の統一指標を確立する動きがあり、将来的には、その統一指標の食品への表示や食品成分表に準じたデータベース化を通じて食品の抗酸化物質の普及を行い、国民の健康に寄与することを目標に掲げている。この社会的背景を鑑みて、本研究はポリフェノール系抗酸化物質の抗酸化力を示す統一指標であるORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity:活性酸素吸収能力)を取り上げて、食品のなかでもポリフェノール含量が高いと考えられる野菜に着目し、食品成分表を用いた栄養価計算と同様の要領で、野菜のORACを食事管理に活用することの有用性あるいは留意点を明らかにすることを目的とした。本年度は、加熱調理により野菜の抗酸化力が変化するかどうかを調べる目的で、試験野菜の選抜およびサンプル調製法の検討を行った。野菜の抗酸化力に対する加熱調理の影響を調べるためにはまず、非加熱状態で同等の抗酸化力を有する試料を用いる必要がある。そこで、根菜類、果菜類、花菜類は基本的に可食部を大きなブロックに切り分け、対称的にサンプリングしてふたつのグループに分けることにした。葉菜類については、ほうれん草などの形態のものは葉部分を縦半分に切り分け2群に分けることとした。これらの群分けが妥当かどうかを調べるために市場で入手した葉ゴボウの葉、にんじん、ブロッコリー、玉ねぎを用い、2群に分けてただちに液体窒素で凍結乾燥後、ORAC、DPPHラジカル捕捉活性を調べて抗酸化力を比較したところ両群に有意差は認められなかった。したがって、この方法で2群にわけた一方を加熱調理し、非加熱試料と加熱試料の抗酸化力を比較することが可能であることがわかった。2群に分けた各野菜を一口大に切り、一方を液体窒素でただちに凍結乾燥、一方をスチームコンベクションオーブンのスチームモードで加熱後ただちに凍結乾燥を実施し試料を作製した。現在、これらの野菜試料の抗酸化力の測定を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、日本人の摂取頻度の高い野菜の調査・選抜を行い、非加熱および加熱試料を調製し、複数の測定法を用いた抗酸化力の測定および総ポリフェノール量の測定を実施し、抗酸化力と総ポリフェノール量の関連および加熱の影響を調べる計画であった。これらの測定には申請機器が必須であったが、本研究課題の平成23年度の交付申請が11月下旬、実際に申請機器が設置されたのが2月下旬ということもあって、さらにサンプル調製法も含めプロトコールの確立に予定以上の時間がかかってしまったため計画すべての測定を実施するに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプル調製法および申請機器を用いた各種測定プロトコールが確立できたので、ORACをはじめ、ラジカル捕捉活性、金属イオン還元力、総ポリフェノール量の測定が問題なく実施できる状況となった。そこで本年度は昨年度選抜した野菜に加えて、さらに例数を増やし、各種野菜の抗酸化力と総ポリフェノール量の関連性、加熱調理の影響について検討する。さらに各種野菜のORAC寄与成分を分子レベルで明らかにする。その上で、食品の抗酸化力の統一指標として用いられているORACと他の測定法との関連性や総ポリフェノール量との関連性について考察する。平成25年度の最終年度には、野菜料理をモデルとして実験データとして得られた野菜のORACを用い、食品成分表を用いた栄養価計算と同様の要領で、食品のORACを食事管理に利用することへの有用性あるいは留意点を明らかにしていきたい。
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