2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23300334
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松岡 憲知 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10209512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 敦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60431657)
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Keywords | 周氷河環境 / 周氷河プロセス / 永久凍土 / 気候変動 / 凍結融解 / 地球観測 / 国際研究者交流 / スイス:ノルウェー |
Research Abstract |
周氷河地形の形成プロセスと内部構造について、長期野外観測と低温室内でのモデル実験に基づいて統一的に理解し、最終的に「周氷河プロセス学」を体系化することを目的として、種々の周氷河現象の発生条件、形成速度、規模や形態を決める要因について解明する.平成23年度は以下の研究活動を行った。 1.野外観測 日本では南アルプスと富士山(温暖永久凍土~季節凍土帯)、海外ではスイスアルプス(温暖永久凍土~季節凍土帯)と北極圏スバルバール諸島(寒冷永久凍土帯)において、岩盤の凍結破砕、崩壊壁の岩盤変形、構造土の垂直・水平変位、ソリフラクション・ローブでの表層土の移動、岩石氷河の変形、氷楔破壊の各地形プロセス、およびそれらを支配する気象・地中環境要素(気温・湿度・積雪深・降水量・風向風速・地温・土壌水分)に関する既存の観測網を更新・強化するとともに、新規の観測を開始した。また有人観測として岩盤や地表面の精密測量(レーザスキャナ、GPS、トータルステーション)および物理探査(非抵抗映像、地震波、電磁波)による地下構造解析を実施した。取得したデータについての分析を行い、地形プロセスを制御する条件について検討した。 2.室内実験 現地観測データににつく経験的な観測結果を検証し、より普遍的な地形変化モデルを得るために、今年度は淘汰構造土の実験設備を整備し、予備実験を行った。特に、礫と土の混合比率や凍結条件の影響について検討した。 3.研究計画・成果の公表 7月末にベルン(スイス)で開催された国際第四紀研究学会で、本研究計画を紹介し、観測網への参加、情報の提供を呼びかけた。また、周氷河地形学の現状と今後を展望するために地学雑誌の特集号「地球寒冷圏の地表変動」を編集するとともに、特集号の総説として、「周氷河プロセス研究の最前線」を執筆して、研究の現状の解説と将来展望について総括した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
様々な周氷河環境において、研究対象とする周氷河プロセスの観測網を計画通りに設置した。観測は順調に進んでいる。また、新規に購入した三次元レーザスキャナやGPS測量器を駆使して、精密な地形の三次元表現ができるようになった。当初計画以上に進んだ特筆すべき事項は、地学雑誌の特集号を責任編集し、本研究の基盤となる研究分野の体系化を進めるとともに、最前線の研究を総括して研究課題を洗い出した点である。ただし、電力を消費する低温室での室内実験は夏場に実施できず、開始が遅れた点が予定外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、(1)昨年度設置した観測網の拡張と強化、観測データの回収、(2)種々の周氷河地形の三次元データの取得、(3)地形の長期変化に関する現地調査と年代測定資料の取得、(4)構造土に関する室内実験を重点的に行う。問題点と対応策は、(1)現地調査に費やせる時間と人材が限られているので、観測の無人化と効率化を図る必要がある、(2)電力を消費する室内実験は夏季には実施せず、春と秋を中心に効率的に進める必要がある、の二点である。
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