2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23300334
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松岡 憲知 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10209512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 敦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60431657)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地球観測 / 気候変動 / 極地 / 永久凍土 / 地形 |
Research Abstract |
周氷河地形の発生条件・形成速度・規模・形態を決める要因、および気候変動の影響を解明し、最終的に周氷河地形の形成プロセスと構造について統一的に理解するために、異なる周氷河環境での長期野外観測、条件を単純化した室内実験を実施した。今年度は、北極圏スバルバール、欧州アルプス、中部山岳(富士山、南アルプス)を対象に、各地に設置した観測システムの拡張とデータ回収、周氷河現象の分布・形態・構成物質・内部構造に関する調査を重点的に行った。また、構造土に関する新規の室内実験を試みた。 「高緯度の寒冷永久凍土環境」に属するスバルバールでは、ノルウェーの研究協力者とともに総合気象、岩盤の凍結破砕、岩石氷河の変形、活動層の変形、氷楔破壊に関する観測を実施した。観測結果を分析した結果、岩石氷河の変形速度と氷楔破壊発生の年々変動とその原因が詳しく判明した。また、研究成果を今後火星表面の周氷河地形に適用するために、スウェーデンの惑星地形研究者とともに、野外調査と研究計画の立案を行った。 「中緯度の温暖永久凍土環境および季節凍土環境」に属するスイス・ベルニナ山地、富士山、南アルプスでは、浅部地温、岩盤崩壊、凍結破砕、土壌移動等の観測と地下構造探査を実施した。その結果、永久凍土分布のより高精度での把握、岩石氷河の変形・凍結破砕・土壌移動の年々変動とその原因の解明、視覚的観測技術の改良が進んだ。特に、南アルプスの岩盤変形の加速化が判明し、岩盤崩壊が迫っていることがわかった。 筑波大学の低温恒温室を利用して、霜柱による淘汰構造土の形成機構を探る実験を行った。野外と同スケールの実験装置を作成し、世界で初めて淘汰構造土の初期地形の再現に成功した。 研究成果は、7編の査読付論文、7件の学会発表、その他の研究報告として公表した。また、一般講演(高山市)やテレビ番組への取材協力により、成果の一部を社会に還元した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
次の5点で当初の予定を上回る成果を挙げた。①淘汰構造土を世界で初めて実験室で再現することに成功した。②富士山山頂部の永久凍土分布には地熱の影響が大きく効いており、従来の分布図を根本的に見直す必要があることがわかった。③南アルプスでは岩盤崩壊が喫緊に迫っており、今後数年間、特に融雪期には要注意であると予想した。④南アルプスで世界で最長となる連続観測記録を取得し、長期変動の傾向と原因が詳しく判明した。⑤研究成果を惑星地形学研究に発展させる基盤が確立された。 従って、当初の計画以上に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成25年度には、以下の研究を重点的に行う。①各地での観測データ取得を継続し、長期観測システムをさらに改良する。②構造土の室内実験をさらに発展させ、より現実の地形形成条件に近づける。③観測・実験、文献情報等に基づいて世界各地の調査・観測データを総括し、各周氷河現象の形成条件、形成速度と変位様式を気候環境・地盤条件・初期地形条件の関数としてモデル化する。④多種多様な研究成果を取得してきているので、より多くの国際学会や国際誌での公表を早急に進める。⑤研究期間終了後は、最終的な目的である「周氷河地形プロセス学」の教科書の執筆に着手するとともに、気候変動や自然災害の予測に関わる成果に関しては一般社会への還元を進める。
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