2011 Fiscal Year Annual Research Report
袋状埋積谷に着目した近畿三角帯北部域の伏在活断層の高精度評価
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23300341
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡田 篤正 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 教授 (90086174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 茂弘 兵庫県立人と自然の博物館, なし, 研究員 (50301809)
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Keywords | 三方断層帯 / 活断層 / 袋状埋積谷 / 近畿三角帯北部 / 活断層の活動履歴 |
Research Abstract |
福井県三方上中郡若狭町鳥浜低地は三方湖の東岸にあり,その北東に位置する中山低地と共に東縁が三方断層帯に限られている.これらの低地堆積物は三方断層帯の活動に関連して堆積しており,広域テフラや14C年代測定が可能な材化石が多く含まれることから,三方断層帯の最新活動時期や活動履歴・間隔,累積変位量等を推定できる.鳥浜低地や中山低地では高速道建設に伴い実施された多数のボーリングコアの詳細観察と広域テフラの採取・分析と同定,植物片の採取と14C年代測定,泥炭質層の花粉分析等を行った.鳥浜低地では深さ100mに達するNEXCO100mコアからK-Ah,AT,Aso-4,K-Tz等の広域テフラを検出し,花粉分析から酸素同位体(MIS)ステージ5eとMIS6の境界深度を求めた結果,最終間氷期以降において堆積速度の急増があり,三方断層帯の活動の活発化が開始したと推定された.約1.1~1万年前と約7.3~5千年前に湖底の堆積環境の急変が確認され,これら2時期において三方断層帯の活動が生じた可能性が高いと示唆された. 中山低地では既存ボーリングコアに基づいて伏在断層の存在が予想されていた.伏在断層の確認と活動度を解明するため,三方断層帯にほぼ直交する方向に測線を設定して反射法地震探査やオールコアボーリングを実施した.反射法地震探査では,三方断層帯に並行して低地内に撓曲構造が存在する可能性が指摘されたが,伏在断層の存在は確定できていない.3地点で行ったコアからはATに加えて,約12.7万年前に降灰したテフラ(BT37)が深度約29mに検出され,挟在深度と堆積物の層相から,約12万年前と約3万年前における中山低地とその周辺の古地理概要を復元できた.BT37に対比可能なテフラは鳥浜低地NEXCO100mコアの深度79.7mからも検出され,両低地間で同一のテフラ層準に約50mの差異があることが判った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鳥浜低地や中山低地で予定した調査は,ほぼ順調に進んでおり,三方断層帯の活動履歴や活動間隔,累積変位量については,従来よりも詳細な知見を2013年夏の国際会議で報告できる状況にある.反射法地震波探査では,鉄道線路のため探査測線を2本に分けて両測線結果の重合が複雑になり,震源として板たたき法を用いたため,浅層の反射面を明瞭にできなかったので,伏在断層の存在を確認できていない.このため推定される断層位置を横切る方向などで追加測定を行っており,伏在断層の存在確認を進めている. 若狭湾東岸の敦賀平野東縁に並ぶ袋状埋積群中の内池見低地では,推定される池見断層の性状確認とその活動度・活動履歴などを解明するため,板たたき法による反射法地震波探査とオールコアボーリング調査を行うことを計画した.反射法地震波探査は,低地の中央部が湿地のため測線を設定できず,測線を南縁の道路沿いに設定して行った.測定結果の解析は時間断面図まで進められている.現在は低地内の未固結堆積物のP波速度の正確な見積もりを行って深度断面図を作成しており,それに基づき低地内を横断する池見層の構造を推定する.一方で2011年冬季の豪雪の影響を受けて,同年12月に予定していたーリング調査は年度内では不可能となり,実施を次年度に繰り越した.このため,コア堆積物の観察やテフラ分析や花粉分析用試料,14C年代測定用試料の採取が行えていない. 以上のような状況から,鳥浜低地や中山低地での研究の達成度は80%程度であり,内池見低地でのそれは40%程度であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
中山低地や内池見低地での反射法地震探査は経費の関係から,簡便で低費用の板たたき法で行った.この手法は,震源が弱くて堆積物中における反射面の明瞭さが欠けており,地下構造の解明にはやや不十分であったと言える.平成25年度に計画している滋賀県長浜市の八田部低地や滋賀県高浜市在原の地下構造探査には,より強力な機器を使用したP波およびS波による反射法地震波手法を導入する予定である. 1.平成23年度に予定した中山低地の反射法地震探査やボーリング調査等は積雪のために,とくにボーリング掘削の作業が遅れていたが,やっと完了した.現在,コア試料の観察,試料採取,諸分析の作業に着手している.ボーリング調査は,3地点で40m級のコア掘削を行った.こうした作業計画により,伏在活断層の変形状態や上下変位量が詳しく求められると思われるが,コア観察と記載,テフラ分析,14C年代測定等の作業には着手している.また,板たたき法による反射法地震波探査の結果をより深化させる解析を進めており,断層ないし撓曲位置の確定作業を行っている. 2.滋賀県長浜市八田部の反射法地震探査やボーリング調査計画では,すでに現地調査を行い,特に次の2項目について詳しい探査と調査を進める計画である.P波による地震波探査の後には,掘削位置や掘削深度の決定し,適切な位置でのオールコアボーリングを実施する計画で進めている. 滋賀県高浜市在原では,S波による反射法地震探査を予定しており,すでに現地調査を行った.ここでも,探査成果を詳しく解析して,ボーリング位置の決定を行い,得られたコア観察と記載,テフラ分析,14C年代測定等を予定して調査・研究を進めている.
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Research Products
(14 results)