2012 Fiscal Year Annual Research Report
磁性ナノ粒子+腫瘍浸透ペプチドによる難治固形癌の電磁誘導焼灼治療
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23300362
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳原 英人 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50302386)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん治療 / 磁性ナノ粒子 / 電磁誘導加熱 / 腫瘍浸透ペプチド / ブロックポリマー |
Research Abstract |
本研究は磁性ナノ粒子を腫瘍に集積させ、体外から電磁波照射し誘導加熱によりがんを焼灼する新規治療を目的にしている。H24年度は主に腫瘍血管特異的透過性亢進ペプチド(iRGD)を併用し、磁性ナノ粒子の腫瘍への能動的集積効果を上乗せする事を目指した。iRGDペプチドと既存抗癌剤治療の併用投与は、乳癌・前立腺癌細胞株の移植モデルで抗腫瘍効果の増強が実証されているが、膵癌細胞株由来の動物モデル(CX:Cell-Xeno)、さらにはより臨床に近いヒト手術検体を用いたモデル(OX:Ope-Xeno)での効果は不明であった。 1)5つの膵癌CXモデルと3つの膵癌OXモデルを作成し、iRGDの有効性を検討した。Evans Blue色素やデキストランの集積は、2/5のcell-xenoで2-3倍に増強され、その2つはどちらもneuropilin-1 (NRP1)の発現が高い細胞株であった。NRP1の発現が弱い3つCXモデルにおいてはiRGDペプチドの効果は限定的であった。3つのOXモデルにおいて、iRGD併用によりデキストランは1.6-3倍程度多く集積したが、Evans Blue色素の集積増強効果は確認出来なかった。 2)3つのCXモデルと2つのOXモデルに対するジェムシタビンの腫瘍増殖抑制効果がiRGD併用によって増強されるか否かを検討した所、CXモデルには一定の効果が認められたがOXモデルでは増強されなかった。 H24年度の研究成果として、iRGDペプチドは一種の分子標的約と見なすことが出来、NRP1高発現の腫瘍においては一定の増強効果が期待できる事が解った。しかし、臨床に近いヒト手術検体を用いたOXモデルにおいける効果は限定的で、臨床患者に対するナノ粒子製剤を用いた治療においてiRGDペプチドを併用する意義はあまり高く無いという結論を得た。この成果は、国際雑誌に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
磁性ナノ粒子を腫瘍に集積させ、体外から電磁波照射し誘導加熱によりがんを焼灼する治療法は、①1000W/g鉄粒子以上の高発熱磁性ナノ粒子を②1-2mg鉄粒子/g腫瘍腫瘍に集積させる事によって実現できる。我々は独自に1000W/g鉄粒子以上の発熱量を持つディンプル付き棒状強磁性ナノ粒子を開発したが、この粒子は溶媒に懸濁している段階では液体だが、血清中に入れると凝集して沈殿してしまうという欠点がある。独自の多点アンカリングPEGをナノ粒子表面に修飾する事を精力的に進めたが、今の所血液中で分散安定性を担保出来る修飾方法を開発出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在障壁となっているのはin vitoro(試験管内)とin vivo(生体内)の間に存在する大きな隔たりである。強磁性ナノ粒子の開発においてい、今までは乾燥粉末の状態になった強磁性粒子を2段階的に表面修飾する事を行って来た。しかし今後、磁性粒子を焼灼により脱水・還元する事無く、溶液中で直接表面修飾する方法に切り替えて条件を模索していく。 また、血液中に投与したナノ粒子をより多く腫瘍に集積させる為のiRGDペプチドの併用においては、neuropilin-1 の発現が高い癌種においてのみ有効である事が解った。今後の研究段階においては、neuropilin-1高発現の細胞株に限定して開発を続けていく。
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