2012 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤およびがん分子標的薬に対する治療抵抗性および薬剤反応性の分子機構
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23300364
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉本 芳一 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (10179161)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ABCトランスポーター / ABCB1 / ABCG2 / ABCB5 / P-糖タンパク質 / BCRP / SNP |
Research Abstract |
[研究1]新規Pim-1阻害薬T1は、ヒト骨髄性白血病MV4-11細胞の増殖を10 nMで阻害した。MV4-11細胞をヌードマウスの皮下に移植してT1の抗腫瘍効果を調べた。T1は、50mg/kg投与群ではT/Cが29%、35mg/kg投与群ではT/Cは42%と、有意な抗腫瘍効果を示した。P-糖タンパク質発現細胞であるMV4-11/MDRは、T1に16倍の耐性を示した。また、BCRP発現細胞であるMV4-11/BCRPは、2倍の耐性を示した。T1は細胞のP-糖タンパク質、BCRPの発現には影響を与えなかった。[研究2]上皮間葉転換(EMT)におけるがん細胞の抗がん剤感受性の変化について検討した。ヒト大腸がん細胞HCT-116のSnail発現クローンを樹立した。樹立したSnail発現クローンは繊維芽細胞様の形態をとり、またE-cadherinの発現が低下していた。Snail発現クローンは、メトトレキサート、シスプラチン、SN-38に2~6倍の耐性を示した。cDNAマイクロアレイによる解析では、MRP3の発現上昇が認められた。[研究3]ABCB5発現細胞のメタボローム解析を行い、ABCB5が排出する細胞内物質の候補を抽出した。[研究4]新規フラボノイドdimerのBCRP阻害作用について検討した。2種類のフラボノイドdimerは、野生型BCRP導入細胞PA/BCRPWTのSN-38耐性を、それぞれのフラボノイドmonomerを2倍濃度で使用した場合より強く阻害した。また、フラボノイドdimerは、変異型BCRP導入細胞PA/BCRP-C603SのSN-38耐性を強く阻害した。BCRP-C603SがBCRPのホモ二量体間の共有結合に必要なCys-603を欠いているBCRP変異体であることから、フラボノイドdimerがBCRPの二量体形成に影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、新規Pim-1阻害薬がin vivoで抗腫瘍作用を示すことを明らかにした。また、新規フラボノイドdimerが強いBCRP阻害作用を示すことを明らかにした。こうした当初計画にはなかった新しい薬の開発研究が進展している。また、当初計画によるトランスポーターの生理機能の解析なども順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降も、当初の計画に従って本研究を進める。特に、ABCB5の生理的基質に関する研究およびがん幹細胞に関する研究を重点的に進める予定である。また、平成24年度より新たに本研究に組み入れたPim-1阻害薬やフラボノイドdimerについての研究も継続する。
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Research Products
(13 results)