2011 Fiscal Year Annual Research Report
南極海表層水の低塩分化が深層大循環に及ぼす影響評価に関する基礎研究
Project/Area Number |
23310003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
北出 裕二郎 東京海洋大学, 海洋科学部, 准教授 (50281001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠島 克恵 東京海洋大学, 海洋観測支援センター, 特任助教 (30597985)
溝端 浩平 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教 (80586058)
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Keywords | 海洋科学 / 極域環境 / 環境変動 / 深層循環 / 南極底層水 / 海面塩分 |
Research Abstract |
本研究は、南極海表層水の低塩分化が底層水塊の変質に及ぼす影響を評価するための基礎研究で、(1)広域における水温塩分の空間分布と変質、(2)表層低塩分層での鉛直塩分フラックスの評価、(3)長期係留観測による低塩分化インパクトの波及機構解明、(4)実測データを用いた衛星塩分データの校正アルゴリズム開発、の4つの観測・研究項目で構成される。 (1)海鷹丸によるCTD観測は、2011年12月末から翌年1月末に実施し、110゜Eおよび140゜Eに沿った水温・塩分・溶存酸素の詳細な構造を捉えた。両海域とも南極底層水の著しい塩分低下が示された。観測された低塩分化の信憑性に関し、船上で実施した塩分検定において確証は得られたが、さらに現在メーカーキャリブレーションを行っている。(2)塩分フラックスの計測には開発したCTチェーンが用いられた。9月に淡青丸での機器の調整を経て、海鷹丸による南極海観測に用いた。ビンセネス湾沖では氷山の風下側、また140゜Eの南極縁辺海域では氷縁において、それぞれ約12時間の観測を実施した。(3)係留観測に関しては、ビンセネス湾沖に2011年1月に設置した係留系を2012年1月に回収した。本係留観測の結果、ビンセネス湾沖で底層水が生成されている証拠が捉えられた。当該海域は海氷生産量が南極大陸の周りで第9番目と推定されている中規模ポリニヤ域であり、このような中規模ポリニヤでも南極底層水が生成され得ること示す非常に重要な発見である。(4)衛星観測による塩分を校正するため、海鷹丸の観測期間中の航路の全域でフロート型CTDによる海面塩分の観測を実施した。さらに、海表面塩分の長期変動を捉えるため、JAMSTECの極域用Mトライトンブイにメモリ式塩分計を取り付け、60゜S,140゜Eの地点に海鷹丸によって設置した。この機器は現在も計測中で、2012年度の航海で回収される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南極海で予定した観測は全て遂行でき、研究対象海域が南極底層水の新たな生成域である証拠を捉えた点は計画以上の成果である。その一方で、海面塩分の観測に関しては、船舶搭載型マイクロ波放射計の改良を検討したが、機器開発の打ち合わせ段階で十分な精度を確保できないと判明したため、メモリ式塩分計を用いたフロート型CTDの開発に変更して計測を試みた。その結果、広範囲における高精度の海面塩分データの取得に成功し、当初の目的を達成した。・
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Strategy for Future Research Activity |
海面塩分の観測手法をメモリ式塩分計へと変更したが、さらにこの塩分計をMトライトンブイ(JAMSTEC開発)に取り付けて60゜Sに設置して長期連続観測を実施する機会を得た。この塩分計は2012年度に回収する予定で、そのデータは衛星で得られる南極海全域の海面塩分値の校正に活用される。この他の観測研究に関しては、当初の計画の通り、海鷹丸による南極海での観測を継続して実施することにより高精度データを蓄積し、海表面への低塩分化インパクトが水塊変質へ及ぼす影響評価・機構解明に活用する。海鷹丸による観測は毎年12月末から1月末の約1ケ月間であり、それ以外の期間に取得データの解析および観測機器の調整を行う。・
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