2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23310005
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 彰 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50231098)
|
Keywords | 環境分析 / 二酸化炭素排出削減 / 環境質定量化・予測 / 腐植物質 / 土壌学 / ブラックカーボン / バイオチャー |
Research Abstract |
植物が炭素(C)を分解されにくい形態で土壌に施用して、土壌C貯留量を増大させることは、大気中の二酸化炭素を減らし、地球温暖化を減速させる方策のひとつである。環境中に普遍的に存在する炭化物はその有力な材料候補であるが、炭化物の土壌中における動態はまだよくわかっていない。本研究は、土壌圏における炭化物の挙動、滞留時間と構造との関係を調べ、土壌C蓄積への寄与を明らかにすることを目的としている。本年度は(1)各種炭化物の土壌中における無機化速度と構造特性との関係解析、(2)炭化物の光分解試験、(3)土壌型と炭化物の量・存在形態・構造特性との関係解析の3つを計画したが、(3)は実施せず代わりに炭化物施用圃場における炭化物の分布を調べた。圃場での使用履歴がある炭化物5種類と実験室内で作成した炭化物6種類をそれぞれ畑土壌に混合し、30℃で暗所培養した。定期的にヘッドスペースのCO_2濃度測定とガス置換を行って分解速度を求めるとともに、試料の固体^<13>C NMRスペクトルおよびX線回折プロファイルを測定した。炭化物の分解率は試料間で最大40倍の差があり、その違いは材料が同じ場合には調製温度が要因であったが、材料が異なると調製法が類似していても分解速度に差が見られ、構造解析の結果、炭素網面の含量と平均サイズが大きいほど分解されにくいことが明らかになった。炭化物の化学的酸化処理による炭素網面サイズの変化と分解速度の変化との関係はこのことを支持した。また、生分解試験と同じ試料を用いて太陽光シミュレーター中で光分解試験を行った。2ヶ月間連続照射を行った結果、0.6~4.2%の重量減少が認められ、その値はより低い温度で調製したものほど高いことが分かった。愛知、滋賀、高知3県において2年間に2~4回の炭化物施用歴のある4圃場で土壌調査を行った。いずれの圃場においても作土層に残留している炭化物C量は施用量と分解量(CO_2発生量)の差を下回っていた。しかしながら、断面調査では作土上層よりも下層に炭化物が多く認められた一方、30cm以深の層からはほとんど検出されず、下方への浸透よりも地表での風雨による流亡が残留量低下の要因と推察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に計画した3つの研究のうち、生分解性試験と光分解試験の2つを計画通り行った。残りのひとつはまだ開始したばかりであるが、代わりに他年度予定であった炭化物連用圃場における炭の分布に関する研究を進めたため、おおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、各種炭化物の土壌中における無機化速度、光分解速度と構造特性との関係に関する研究を完結させ、炭化物施用圃場における炭化物の分布に関する解析をさらに進めるとともに、土壌型と炭化物の量・存在形態・構造特性との関係、^<14>C年代測測定に基づく土壌中における炭化物の量・存在形態・構造特性の経時変化を調べていく予定である。
|
Research Products
(3 results)