2011 Fiscal Year Annual Research Report
気候感度の物理パラメータ不確実性のメカニズム解明と制約
Project/Area Number |
23310014
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
塩竈 秀夫 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 研究員 (30391113)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 雅浩 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70344497)
小倉 知夫 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (10370264)
横畠 徳太 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 研究員 (20391170)
|
Keywords | 気候変動 |
Research Abstract |
CO_2濃度が産業革命前の2倍になった場合の全球平均地上気温上昇量を示す気候感度の予測には、大気海洋結合モデル間で大きな不確実性がある。ここでは日本で開発してきた最先端の大気海洋結合モデルであるMIROC5を用いて、複数の物理スキームのパラメータ値を観測の範囲内で走査する大規模なアンサンブル実験を行い、気候感度の物理パラメータ不確実性の定量化と、そのメカニズムの解明を目指す。さらに観測データとの比較により、現実的な気候場を再現しえるパラメータ値の範囲を拘束条件として、気候感度の不確実性の制約を行う。 H23年度は、大気海洋結合モデルをもちいて効率的かつドリフトを避けて物理アンサンブルを行う方法を開発した。まず大気モデルによる実験を行い、各パラメータを最小値・最大値まで振った場合の、大気上端放射バランスの変化に関する情報を得た。次に、その情報を用いて、複数パラメータに摂動を与えた場合の放射バランスの変化をエミュレートした。このエミュレーション情報と、ラテンハイパーキューブサンプリング法を組み合わせることで、フラックス調節なしでも気候ドリフトを起こさずに大気海洋結合モデルで物理アンサンブル実験を行うための手法(Suppressed Imbalance Sampling)の開発に成功した。この手法を用いて、これまでに56メンバーの産業革命前条件コントロール実験と4倍CO_2濃度実験を実行した。その結果、同じMIROC5モデルであっても、パラメータ値によって1℃程度の気候感度の幅を持つことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに、大気海洋結合モデルをもちいて効率的かつドリフトを避けて物理アンサンブル実験を行う手法の開発に成功したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
アンサンブル実験の出力データを用いて、パラメータ不確実性による気候感度のばらつきの確率分布を調べる。次に気候感度のばらつきの主要因となるパラメータまたはパラメータ間相互作用を統計解析により特定する。特定した主要因パラメータに対する摂動が、4倍CO_2濃度実験とコントロール実験のさまざまな気候場にどのように影響を与えているかを明らかにする。さらに、その気候場の変化が、どのように気候感度の違いをもたらすか、物理メカニズムを解明する。気候感度の不確実性にとって重要な気候場に関して、可能な場合は観測データと比較を行い、パラメータの値がどの範囲内なら現実的な気候を再現できるかを判断する。
|