2011 Fiscal Year Annual Research Report
個体群理論に基づく銀ナノ粒子の水環境生態リスク評価
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23310026
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
柏田 祥策 東洋大学, 生命科学部, 教授 (20370265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立田 晴記 琉球大学, 農学部, 准教授 (50370268)
長坂 征治 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (60534013)
廣津 直樹 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (40584389)
坂本 正樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (20580070)
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 助教 (10581613)
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Keywords | 活性汚泥 / 水生植物 / 藻類 / 動物プランクトン / メダカ / 銀ナノコロイド / 毒性 |
Research Abstract |
(1)活性汚泥への影響:下水処理場から採取した活性汚泥およびOECDに指定の人工排水に銀ナノコロイド(SNC)を最大終濃度1mg/Lとなるように添加したところ,処理能の阻害はみられなかった。しかし,SNC由来の銀イオンのみの影響を解析したところ処理能の阻害がみられ,処理能阻害は銀イオンによるものと強く推測された。 (2)水生植物への影響:イネの発芽中に銀ナノコロイドを処理して発芽率を調べた結果,SNC濃度10mg/Lまで正常に発芽した。次にイネを発芽させた後,SNCを含む水耕液で5週間栽培し,葉と根の生育量を調べた。SNCO.1mg/L以上で濃度依存的に葉および根の伸長が阻害された。特に根のNH4+の吸収速度が低下していた。 (3)藻類への影響:ムレミカヅキモへのSNCの毒性(EC50)は55ppb(Ag濃度)であった。光条件を明暗周期(L14/D10)に変更して培養した場合には,生育阻害率の低下が観察され,連続照明条件下ではSNCの毒性が強化されていることが示唆された。また培養の初期生物量の増加によって阻害率が低下していた。また光電子伝達系IIが阻害されていた。 (4)動物プランクトン群集への影響:SNCと硝酸銀を用いてミジンコ急性遊泳阻害試験(Daphnia magna,Daphnia galeata,Bosmina longirostris)を行った結果,D.g.とB.lが高い感受性を示した。またEC50がSNCで硝酸銀よりも3-5倍高かったので毒性の直接原因がSNCではなく銀イオンであると推察された。それぞれの物質についてはEC50(遊泳阻害)濃度でも内的自然増加率に影響がなかった。 (5)メダカへの影響:銀イオン曝露区において,メダカ飼育液(ERM)を使用した胚では,心拍数低下,孵化遅延,および胚の発達阻害が確認された。SNC曝露区において,ERMを使用した場合,pH4では心拍数の低下および孵化遅延が確認され,銀に対して最も高い生物濃縮性を示した。pH7およびpH9においても心拍数の低下が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)活性汚泥への影響:現在銀の化学分析を行っている以外は当初の予定通り。(2)水生植物への影響:イネを用いた影響結果は着実に進んでいる。現在共焦点レーザー顕微鏡および電子顕微鏡を用いた研究を行っている。(3)藻類への影響:予定通り進展している。(4)動物プランクトン群集への影響:現在,阻害影響研究から生命表データの取得がほぼ完了しつつある。(5)メダカへの影響:塩濃度,pHなどを変化させた場合の影響などについて,物理化学的方面からも,多角的に検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
銀イオンのみを解離する銀ナノ粒子固相化プレート(SNPP)の性能試験が終了していることから,今後は銀イオンのみの毒性評価が可能になり,銀ナノコロイド(SNC)の毒性および解離する銀イオン分析結果から,SNCと銀イオンの毒性をそれぞれ評価することが可能になると期待される。さらに,共焦点レーザー顕微鏡を用いた影響の可視化および電子顕微鏡を用いた銀分布の可視化などを行う予定である。平成24年度は国際誌への投稿論文を積極的に行う。
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Research Products
(9 results)