2011 Fiscal Year Annual Research Report
気候温暖化がシダ植物の種多様性に与える影響の予測と検出
Project/Area Number |
23310028
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
田中 信行 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (80353762)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 哲哉 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (20414493)
|
Keywords | 植物生態学 / 脆弱性 / 分布予測モデル / モニタリング / 地理情報システム(GIS) / 植物社会学 / 潜在生育域 / 適域 |
Research Abstract |
本研究は、温暖化が日本のシダ植物の種多様性へ与える影響を定量的に予測し、検出することを目的とする。正確な将来予測のためには、現在の分布を高い精度で予測する分布予測モデルを構築することが必要である。日本では過去100年間に1.06℃上昇した(気象庁2005)。近年の温暖化影響を検出するために、温暖化に伴い生育地が大きく移動する感受性の高い種と地域を選んで、現地調査を実施し分布の変化を検出する。本年は、分布データの整備と、シダ植物7種について影響予測を行った。 シダ植物の分布図(倉田・中池1979-2005)の電子化を行った。植物社会学ルルベデータベース(PRDB)には、地域間で調査地点の密度に差があるので、現地調査と文献によりデータの追加を行った。 異なる分布域をもつシダ植物7種の分布を気候条件から予測する分布予測モデル(分類樹)を構築し、将来の気候における潜在生育域(生育可能な地域)や適域(生育に適する地域)を予測した。シダ植物分布図の種の在不在データをモデルの説明変数に使用した。一方、PRDBから抽出した在不在データをモデルの精度検証に使用した。対象地域は日本全域で、空間解像度は約10 km×10 kmとした。現在気候にはメッシュ気候値2000(気象庁2002)を、将来の気候には2081~2100年のRCM20(気象庁2004)とMIROC(K-lmodel developers 2004)を使用した。シダ植物7種の分類樹モデルから予測された現在の適域と2つの将来の気候における適域を比較すると、増加する種と減少する種に分けられた。亜熱帯や暖温帯に分布するイシカグマ、コシダ、ベニシダの適域は温暖化後に増加し、中間温帯から寒温帯の間に分布する4種の適域は縮小すると予測された。解析結果から判定される温暖化に対して感受性の高い種と地域が、検出の対象地候補となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分布予測モデルのデータとして最も重要な植物分布データを整備した。また、温暖化影響検出の対象地について検討し、一定の結果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
分布データの整備が進んだので、分布予測モデルによる影響予測をいろいろな種で実行していく。予測精度が高くない種が見つかることが予想されるので、そのような種をどのように扱うかが1つの問題である。現地における影響検出のための予備調査を実施する。
|