2013 Fiscal Year Annual Research Report
正負の生態系サービス経済評価のための環境経済・倫理・法政策・生態学の融合研究
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23310031
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉田 謙太郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (30344097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 乾 独立行政法人森林総合研究所, 企画部, 上席研究員 (10353731)
深見 聡 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (20510655)
菅原 潤 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (70292183)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生態系サービス / 生物多様性 / 環境経済評価 / 環境倫理 / 生態系サービスへの支払い / 鳥獣害 |
Research Abstract |
生物多様性を基盤とする生態系サービス保全に向けて、生態学と環境経済学に加えて、倫理学及び法政策学の視点を取り入れた経済価値評価を実施するとともに、正負両面の生態系サービスへの支払いに関する実態調査及び制度分析を行うことが本研究の目的である。平成25年度は、森林生態系と希少種保護という観点から、鹿児島県奄美群島、インドネシアの国立公園、そして長崎県五島列島及び対馬の鳥獣被害等を対象として現地調査を実施した。また、放射能汚染による生態系(供給)サービス劣化についてアンケート調査等を実施した。放射能汚染による生態系サービスの劣化について、食料や水等の供給サービスに関する回避支出行動の変化に関する調査、そして経済評価を実施した。平成23・24年度と同様の調査フォーマットを適用することにより、異時点間における変化とレジームシフトに関する実証分析を行った。さらに、順序プロビット分析を行うことにより、回避行動に関する詳細な要因分析を行った。正負両面の生態系サービスへの支払いについては、長崎県島嶼部における鳥獣被害対策と希少種保護、供給サービスの関係性について整理、検討した。インドネシアにおいては、グヌン・ハリムン・サラク国立公園における森林利用とその規制が絶滅危惧種に与える影響に関する調査を実施し、国立公園制度の有効な運用策に関する知見を得るとともに、日本の国立公園政策と比較検討した。さらに、環境倫理とエコツーリズムの観点から、奄美大島のマングース対策、小笠原諸島のノネコ、ノヤギ対策等の外来生物問題に関する検討を行った。また、外来生物対策に関する全国規模の情報収集を行い、外来種ごとの体系的な整理を行うとともに、政策フレームワークを構築するための情報収集を行った。生態系サービスへの支払いについては、神奈川県の水源環境保全税等に関する政策評価の枠組みについて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希少種保護と鳥獣被害、外来生物に関する現地調査及びアンケート調査を3年間で概ね終了させることができた。放射能汚染による生態系サービス劣化に関するアンケート調査を継続的に実施し、異時点間における生態系サービス劣化とレジームシフトに関する十分な研究成果を得ることができた。それらの成果を単著として出版した。さらに、水源環境保全に関する国内各地域の生態系サービスへの支払いに加えて、インドネシアにおける国立公園における保護管理政策について、詳細な調査を実施できた。外来生物対策に関しては、全国における包括的な情報収集を行うことにより、効果的な外来種対策の整理・把握を行うことができた。 また、供給サービスと放射能汚染について継続的な調査を実施することにより、当初の課題であった環境倫理学の環境経済評価における位置づけを明確化できた。さらに、放射能汚染により社会的課題となった世代間倫理の問題について、環境倫理研究の観点から検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においては、生物多様性と生態系サービスの中でも、人間にとってポジティブな影響のみならず、外来生物や鳥獣害などのネガティブな生態系サービスの影響について分析することを課題としている。生態系保護や鳥獣被害、外来生物に関しては、法制度の改正や保護地域の新設など多様な政策動向を踏まえたうえで、適切な事例を選択して経済評価を実施することを計画している。また、本研究課題の波及効果を高めるため、放射能汚染と生態系サービスに関する継続的な調査及び新規調査を計画している。そして、研究成果の発表についても、論文や書籍、学会大会等において積極的に公表する計画である。
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Research Products
(24 results)